縁 宴 艶
田辺たち新入生が私たちのサークルに加入して3ヶ月が経った。掴みどころのない田辺と妙に波長が合ってきた。サークル室でほとんど一緒に過ごし、週1のサークル活動でも交流を深めていった。別に好きだとかそういう感情はなかった。ただ、一緒に居て楽しいと感じるようになっていた。
そんなある日、私は田辺を家に招いた。サークル活動の詳しい説明をする・・・というのは名目で、本当は彼ともっと一緒に居たかった。当然、サークルの話なんてするわけもなく、2人でお酒を飲んでテレビを見て笑いあった。まだ宮迫がいた頃のアメトーークが流れていた。
「海美さん、トイレ借りていいですか?」ほろ酔いでフラフラし始めていた私を田辺の告白が覚醒させた。思えばさっきから足を組み替えたりもじもじしてたような。
「廊下出てすぐ!」
私はトイレの場所を顎で指し、田辺を案内した。私はそっと扉の奥に耳を澄ませた。田辺の体内に溜まっていた液体が濁流のように一気に流れ出るのが聴こえた。
トイレから戻った田辺は何事もなかったかのように酒を飲み始めた。「何事もなかった」。そう、何事もなかったはずなのだ。お酒を飲んでトイレに行く。当たり前のことのはずなのに、私はこの状況に興奮を覚えた。高鳴る心臓の鼓動を感じながら私は田辺に少しずつ近寄り、肩を寄せた。残りの缶チューハイを一気に飲み干した田辺は私に微笑み語りかけた。
「海美さんってこうして見ると可愛いですよね」
こうして見るとってなんだ。普段はどう映っているんだ。でも、何気ない彼の一言が私の興奮を加速させた。
「おしっこしたい」
不意に口から漏れ出してしまった。歳下の男を前にトイレではなく「おしっこ」と言ってしまう私の浅はかさよ。
「行ってくればいいじゃないですか。どうかしたんですか?立てないんですか?」
そんなことはない。この足でしっかり立てる。
「うん」
私は彼の気遣いに甘えたくなった。酔ったふりをして私は彼に身を委ね、トイレに向かった。
便座が上にあがっていた。
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