ここが僕のトイレです

面倒 臭(おもたおれ しゅう)

プロローグ

          ✳︎


「ここが僕のトイレです!」


 嬉しそうに言う彼の指の先には家庭のトイレとしては似つかわしくなく、小便器と大便器の両方が並んでいた。


 ──そして、小便器の中には目隠しをされた状態の小さな少女がすっぽりと嵌っていた。


「ここが君の特等席だよ」


 続いて指を指した先はまだ誰の穢れも付いてい無いであろう大便器。


 その刹那、脳よりも早く体が判断した。


 ──逃げなければ。


 振り返り足を踏み出した瞬間、目の前が歪んだ。足は止まり、体が地面に叩きつけられる。欲していない睡魔が彼女を静かに蝕んでいた。


「助けて……」


 誰に聞こえる訳も無い叫びは彼女の脳内に痛みを伴いながら何度も何度も反芻する。


 遠ざかる意識の中ではっきりと聞こえたのは小便器の方向からだ。



「ようこそ地獄へ」

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