李夜伝【水曜更新】
Meg
序 愛と復讐のはてに
「おまえにはやはり黒がよくにあう。俺がやったその
古びた城の、広い寝室。あわい色の、うすい大きな布がたらされている。
あとずさりして、
帯から、
大きな
「なぜ逃げる?」
「だれか。助けて」
よびかけてもだれもこない。
「俺はおまえの夫だ。逃げる必要などない」
「どういうこと?」
「おまえはこの
「
「そうだ。そのうち立派な宮殿も建てよう。いまからわが国の兵や民に、俺の皇后の姿を見せみとめさせる」
「私言ったじゃない。
「ほかにやれるものがなかった」
「私は不妊よ。あなたの一族のために子どもも作れないのよ」
「べつにかまわない」
彼は大きなあたたかい手のひらで、夜糸の手をつつんだ。
「皇帝としてあたえられるものはすべてあたえる。今度という今度は約束を守れよ。ほうびも毎日くれ」
ねだるように、彼は夜糸の唇に口づけする。
なにもかもまちがいだった。
そう思いながら、夜糸はいままでのことを回想した。
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