幕間その二 「『陛下』はわかっておらんのだ。芸術品の奥深さが」

 『森の王』がレヴィン達に倒された光景を、遠くから眺める者がひとり。


「かの伝説のメイルドラゴンを参考に創り上げた実験作であったが、散ったか。吾輩はもう少し使えると思っていたのだがな」


 そう呟く男は全身に黒いフード付きのローブを纏っており、顔は見えない。


「いいところまでイッたのに、残念だったわネ。ドクトル」


 そこへ彼と同じローブを纏った女が背後から現れる。


「ダリアか。何をしに来た?」


 ドクトルと呼ばれた男が不機嫌そうな声で問う。


「別ニ。ただ通りすがったから、アナタの実験体……名前なんだったかしラ?」

「『メイルコング』だ」

「そう、そのメイルコングの様子を見に来たんだけド、まさかあの子が倒しちゃうなんてネ」

「顔見知りか?」

「ええ、この間成人したばっかりの『救世主』ヨ。私を殴るくらい、根性のある子」

「そうか、あの娘が……吾輩たちの驚異になるのか。実に惜しいな」


 ドクトルは少し考え込むような仕草をする。


「彼女が『救世主』でなければ、あの健康的で肉付きのいい肢体を、吾輩の実験材料として使えたであろうに」


 それを聞いたダリアは思わず吹き出す。


「ふフッ! さすが変態ねェ、アナタ。『陛下』にも引かれるだけあるワ」


「『陛下』はわかっておらんのだ。芸術品の奥深さが」


「ハイハイ。わかったから行くわヨ。次は何を作るノ?」


「メイルコングの失敗を糧にして、もっと完成度の高いモノを作りたい。今度はより人間に近くなるような……まぁ期待して待て」


「期待しないで待っててあげるワ」


 ダリアがクスリと笑うと、ふたりの姿は一瞬にしてその場から消え去った。

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