幕間その二 「『陛下』はわかっておらんのだ。芸術品の奥深さが」
『森の王』がレヴィン達に倒された光景を、遠くから眺める者がひとり。
「かの伝説のメイルドラゴンを参考に創り上げた実験作であったが、散ったか。吾輩はもう少し使えると思っていたのだがな」
そう呟く男は全身に黒いフード付きのローブを纏っており、顔は見えない。
「いいところまでイッたのに、残念だったわネ。ドクトル」
そこへ彼と同じローブを纏った女が背後から現れる。
「ダリアか。何をしに来た?」
ドクトルと呼ばれた男が不機嫌そうな声で問う。
「別ニ。ただ通りすがったから、アナタの実験体……名前なんだったかしラ?」
「『メイルコング』だ」
「そう、そのメイルコングの様子を見に来たんだけド、まさかあの子が倒しちゃうなんてネ」
「顔見知りか?」
「ええ、この間成人したばっかりの『救世主』ヨ。私を殴るくらい、根性のある子」
「そうか、あの娘が……吾輩たちの驚異になるのか。実に惜しいな」
ドクトルは少し考え込むような仕草をする。
「彼女が『救世主』でなければ、あの健康的で肉付きのいい肢体を、吾輩の実験材料として使えたであろうに」
それを聞いたダリアは思わず吹き出す。
「ふフッ! さすが変態ねェ、アナタ。『陛下』にも引かれるだけあるワ」
「『陛下』はわかっておらんのだ。芸術品の奥深さが」
「ハイハイ。わかったから行くわヨ。次は何を作るノ?」
「メイルコングの失敗を糧にして、もっと完成度の高いモノを作りたい。今度はより人間に近くなるような……まぁ期待して待て」
「期待しないで待っててあげるワ」
ダリアがクスリと笑うと、ふたりの姿は一瞬にしてその場から消え去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます