「神擁七国(しんようななこく)」の盟主国として西大陸に名を馳せる光国アルドラ。しかし東方より強襲を仕掛けてきたスヴァルド帝国に抗う術なく王城が陥落、最期を覚悟した王は王子アルクスに光国再興を託す。かくてただふたりの供を連れたアルクスは、父の願いと己が志を果たすべく、長き旅への一歩を踏み出したのであった。
滅ぶ国から無力な王子が逃亡する負のクライマックスから始まる本作、まさに貴種流離譚の王道ど真ん中! しかも敵である帝国は銃器を使うのです。剣と魔法の世界観にとって銃は天敵ですよね。どうやって勝つのか? そもそも勝てるのか? 出だしからわくわくとハラハラが止まりません!
そしてアルクスくんやお供のふたりの心情がまた魅力的のです。責務を果たさなければと各々が自分に言い聞かせ、あがいてもがいて。暗闇の中を手探りでじりじり進んでいくようなもどかしさ、チートものとは真逆のおもしろさを噛み締めさせてくれるのです。
細やかな設定と濃やかな人物描写が映える本作、読み応えしかありませんよ!
(「これぞ王道! 貴種流離譚!」4選/文=高橋 剛)