第16話 学園祭コンフューズ
(むかし、蓮ちゃんに、引っ越しするって告げたとき)
『えーっ!私、もっと、ずっとアヤネちゃんと仲良くしてたかったなぁ』
(蓮ちゃん、あの時と同じこと、言ってたよね)
(お泊まりの夜の日と……)
(過去が、今に繋がった気がして……すごく嬉しい)
(だからこそ、蓮ちゃんで変なこと考えちゃ……だめ、だよね……?)
「蓮さん、体調はもう大丈夫なんですか?」
「うん、この前は休んじゃってごめんなさい」
「大したことなくて、良かったです」
(あれ……先週とは違って、今日はなんだか、和やかな空気だなぁ)
「そうそう、蓮さんにご報告があります!」
「どうしたの?」
「実は、私と加村さん、晴れてお友達になりました!」
「お、おぉ?!」
(うそ、先週まで、あんなにピリピリしてたのに?!)
「それは……良かった。うん、ホント良かった」
(私が休んだ日に何があったのか、物凄く気になる)
「そして……あの、聞いちゃいました。アヤネさんとのこと」
「ちょっ冴衣ちゃん! だからいきなりそんな直球は……!」
「……え?」
「ーーーー倉庫でのことを、冴衣ちゃんが気にしていたので! ごめんなさい、先輩!」
「ど、ど、どこまで話したの?」
「えーっと、蓮さんがアヤネさんを好きで、加村さんが二人のために一肌脱いでるってとこまで、ですね」
「あぁ……こうして私の秘密を知る人が、増えていくのか」
「正しくは、協力者が増えた、ですよ。ね、加村さん」
「冴衣ちゃんっ! あんまり調子に乗らないで!」
「ところで。学園祭の出展一覧チラシ、完成しましたね」
「ね、いろいろなお店があって楽しそう」
「私たち実行委員は裏方で、出し物には参加しないので、ちょっと羨ましいですね」
「そしたら当日、観客として回り放題じゃない」
「冴衣ちゃん、当日は当日で実行委員の仕事が忙しいと思うよ」
「ん、残念……そうだ!」
「?」
「当日の、蓮さんとアヤネさんのデートコースを決めません?」
「ええっ?!」
「冴衣ちゃん、話聞いてた? 私たち当日も仕事があるって……!」
「だから、私と加村さんが1.5人ぶん頑張って、蓮さんにデートする時間を作ってあげればいいの」
「いや、それは二人に申し訳な……」
「冴衣ちゃんにしては、いいアイデアかも……」
「環?!」
「加村さん」
「冴衣ちゃん」
「「頑張ろう(頑張りましょう!)」」
「ま、待ってよ! 私はともかく、生徒会長のアヤネちゃんがそう簡単に抜けられるわけが」
「蓮さん。私だって、静早の生徒会の一員ですよ?」
「えっ」
「当日のスケジュールに口出しする権利くらいは、持ってます」
「はいっ! 生徒会メンバーの休憩時間、もぎ取れましたー!」
「本当に成し遂げたのか……」
「冴衣ちゃんのことだから強引に押したんですかね……」
「当日も任せてくださいね。それにしても……」
「?」
「確認なんですが、お二人は本当にまだ付き合ってないんですよね?」
「あ、やっぱ冴衣ちゃんもそう思うよね?」
「つ、つ、付き合ってないよ?!」
「それにしては、ちょっと親密すぎというか……ねぇ?」
「だから、倉庫でのあれは事故で!」
「って言われても、第三者が見たら、誰がどう見ても怪しいですって」
「先輩、あれは私もちょっと、どうかと思います……」
「事故! 事故なの!」
「うーん。仮に、もし事故だとしたら、そっちのほうが不味くないですか?」
「ど、どういうこと?」
「そりゃ、気まずくなるでしょう」
「…………まさか」
「私だったら、友達と思ってた人と急にあんなことがあったら、気まずくてしばらく会えなくなると思います」
「私は、冴衣ちゃんに気まずいという感情があったことに驚いたけど……確かに、一理ありますね」
「でもアヤネちゃん、休んでた時にメッセージくれたよ?」
「社交辞令かもしれませんよ」
「そ、それにアヤネちゃんとはバスに乗る前も、お疲れ様って一言会話を……」
「一言だけですか?」
「……はい」
「二人っきりでは直接話してないんですよね?」
(そ、そう言われてみれば?! 倉庫での事件のあと、アヤネちゃんと会話らしい会話をしてないような?!)
「もー冴衣ちゃんっ! 言い方選んで!」
「いいの、環。冴衣ちゃんくらいズバズバ言ってくれたら、一周回って逆に励みになるというか……」
(褒めて焚き付ける環と、落として煽る有原ちゃんって、けっこう名コンビかも。いやいや、煽られてる当事者としては冷静に感心してる場合じゃないけど)
「先輩、冴衣ちゃんの言うことはあんまり気にしなくて大丈夫ですからね」
「備品を返しに行く時に、それとなく話しかけたらどうですか。私たち、外してますから」
「うん、ありがと……じゃあ、そうするね」
「蓮さん、行ったみたい」
「冴衣ちゃんの言葉の選び方は、隣で聞いててヒヤヒヤするよ」
「まぁ私あんなこと言ってみたけど、実は……」
「?」
「アヤネさんが、蓮さんを気まずく感じてるかも、なんて、本当はこれっぽっちも思ってないし」
「は?」
「アヤネさんって……けっこう満更でもないんじゃない?」
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