限界旅行記

べてぃ

厳冬の試される大地編

第1話 ガチャ回し

 無論、試されるのは人間の方である。


 事の始まりは二〇二一年の秋、心斎橋でガチャを回したことにある。


 その日は、水素ガスの如くフットワークの軽い友人と梅田で落ち合い、下らない話をしていた。こんな人間にも友人というものがいたのである。何ともありがたいことだ。

 その友人との会話で、この辺にある──といっても地下鉄で六分ほどかかるのだが──ピーチ・アビエーションのガチャが話題に上った。何だかよう知らんけど、一回五千円のガチャを回すと、指定路線にだけ使える五千円+αのピーチポイントが手に入るというやつである。ただし、どこの路線で使えるかは回してみないと分からない。関空発であることは確定しているものの、新千歳だか福岡だか石垣だか、どこになるかは運任せである。航空需要が低迷するこの時期に、何とも上手い企画を考えたものだ。


 まあ話のネタにでも、ということでその友人と一緒に回してみると、出てきたのは石垣。友人は新千歳だった。

 はて……隣の花は赤いとはこの事だ。石垣は有名な観光地であり、オフシーズンとはいえ、温暖な気候の下で楽しく観光できそうである。であるのだが、筆者は友人の当てた新千歳が気になったのだ。期限は翌年二月。真冬の北海道、雪と闘いながら走る列車を乗り継ぐ旅は何だかとても面白そうじゃないか。想像しただけでわくわくしてきた。


 長い付き合いとは侮れないもので、様子を察した友人は、快くガチャを交換してくれた。


 かくして、筆者は厳冬の北海道旅行を手に入れたのである。

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