ベビーシッター【wrote by LAY-RON】

NOVEL OFFICE MT SECO

第1話 受胎宣言

大学時代の大親友の彼女のツレと結婚した俺の大親友。その奥さんが妊娠した。初産になるからと大張り切りなのはいいんだけど、なんで男同士の大親友がこんなに盛り上がっちゃってるんだかよくわからない。

奥さんには何度も会っている。おっとりしているし、奥さん向きで、産後豹変するタイプには見えない。大親友もふつうにいいやつだから家事も育児も手伝うんでしょ?と言うと、大親友は急にキレ出した。ど、どうした?!居酒屋に不穏な空気が漂う。

「お前なあ!!おかしいだろう!!奥さんと俺は同等なんだよ!家事も育児も手伝うじゃなくて、半分こ!負担はすべて半分こ!!手伝うなんて奥さんが負担の主役みたいじゃないか!いいか、結婚っていうのは苦楽を共にするものなんだよ!!!」


わかった、、、

なんとか同意の意思は示せた。


大親友の説教がはじまった。

こいつこんなやつだった?結婚報告の時は「まあ、俺もそろそろね。あいつを泣かせてばかりだったし」とか言ってカッコつけてたじゃないか。実際はめちゃモテ奥さんと結婚にまでこぎつけられてホッとしていたことは周知の通りだった。よく結婚できたなあと言われた時も余裕っすよとマウントを取るほどに喜んでいたし、それくらい、奥さんとこいつの間には歴然とした恋愛ヒエラルキーがあった。そういう後ろめたさから上からしゃべりたがったけれど、それをまあこの菩薩顔の奥さんは「うふふふ」なんて目を細めて見ていたから、何度も撲殺計画を立てたんだっけ。惚気を見せつけられてこいつの勘違いを見せつけられて、こいつの新婚当時は俺たちにとっては地獄だった。

結婚後もしばらくは仕事を頑張りたい!とたびたび家を開けることがあったみたいだし、その時も「この間なんとか家事手伝うことができたよ」なんて普通に言っていたのに。おい、いつ変わった?どうした?どのタイミングでお前キャラ変した?確変か?パチンコまた再開したのか?どこが出るんだよ、俺もたまには行こうかな。駅前?それとも、国道沿い?


「おい、お前、令和の男がそれじゃ生きていけないぞ?」


あれ?ああ、終わったんですね、説教。

「そうだな。気をつけるよ」

芝居は得意だから大親友もなんか俺のしおらしい表情に納得しているみたいでよかった。


「とにかくお前も家事育児を勉強すべきだと思ってな。俺ベビーシッターの会社作ったんだよ。お前相変わらずバイトリーダーだろ?俺の会社で働こうぜ!」


「俺の会社で働こうぜ!」

うわっ、歯が白い。ホワイトニングとかしてんのかな?

う、うん、、、、、

え?、、、、部活の勧誘?


初出勤は三週間後。

そのために俺は一部上場のアミューズメント系会社の課長職を辞退した。そして退職した。勤続10周年目前だった。

たった二週間で。部内の真っ白い目は今も悪夢として蘇る。毎晩うなされている。

もうなんでもできちゃう気がする!!


ガキども、お兄さんが全部受け止めてやるからな、バッチコーイ!!!!!!!


、、、、もうヤケクソです。



<<<<<続きます。。。>>



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