復讐 6
「俺は人生を狂わされた。夢も何もかも踏み潰された。だから復讐を誓ったんです」
「復讐ですか……」
松雪はそう口に出した。九路は続ける。
「まずは、探偵を使って、イジメ主犯格の三人の現在を調査しました」
松雪もイジメをしていた奴に復讐をしたくないかと聞かれれば、してやりたいと思う。だが、そこまでの行動力は持ち合わせていなかった。
「幸運なことに、三人共地元からそう遠くへ行っておらず、簡単に特定ができましたよ」
九路は鋭い眼光をし、ニヤリと笑って話す。
「パチプロ時代のツテで、アジア系の半グレグループに辿り着きました。そいつらに五百万円を渡して、三人の拉致を依頼しました」
松雪の背筋がゾワッとする。そんなテレビドラマみたいな話が現実にあるのかと。
「三人の行動パターンを監視し、都合良く全員かっさらえるのが今日でした」
九路は人気のない山奥に座っていた。その瞬間を今か今かと待ちわびる。
虫の鳴き声と、自身から漂う虫除けスプレーの匂い。取り出したスマートフォンには二時間以上前に、三人をそれぞれ別の場所で拉致したという報告が入っていた。
長いような、短いような時間。興奮と緊張で胸の高まりが収まらない。キーンと耳鳴りがして意識が遠のきそうだった。
両手で頬を叩いて気をしっかりとさせる。すると遠くから懐中電灯の光が見えてきた。
二人一組で何かが入っている寝袋を担ぐ男達、九路も自身の懐中電灯を光らせて合図を送った。
アジア人たちは九路の前に寝袋を下ろすと、ふぅーっと一息ついていた。
「九路サン、仕事は終わった」
カタコトの日本語でリーダー格の男が言うと、九路は寝袋をめくって顔を確認する。
忘れもしない、憎たらしい顔がそこにはあった。そいつは口をタオルで塞がれていたが、目を見開いてこっちを見ていた。
とりあえず、ムカついたので立ち上がった後、顔をサッカーボールキックで蹴り飛ばしておく。寝袋がクネクネと激しく動いた。
同じ様に全員の顔を確認すると、九路は懐から札束を取り出してリーダー格の男に手渡す。
「後金の三百万です。ありがとうございました」
「ありがとごじゃます」
「いえいえ、何から何までありがとうございます。それじゃ俺はコイツ等を殺すんで」
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