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「バオォオオオオオォン!」


 熊は天まで届くような咆哮を上げながら電光石火の勢いで前足を振りかざし、その鋭い爪は女の子を確実に捉えた。


 直後、女の子は服も体も八つ裂きになりながら吹っ飛び、辺りには血しぶきが舞う。気付けば僕の足下に、ほんの数秒前まで『彼女の肉体の一部だった部分』が転がってきたのだった。


「うわぁあああああぁ~!」


 僕は悲鳴を上げながらその場にへたり込んだ。腰が抜けてしまって動けない。もし熊がこちらへと攻撃の矛先を向けたなら、まごまごしている間に襲われてしまうだろう。


 ただ、すぐにミューリエが剣を抜いて僕と熊の間に立ち、威嚇すると彼は森の中へ去っていったのだった。これでとりあえずはひと安心だ。


 その後、僕たちは周囲に散った肉片を可能な限り集めると、女の子を土の中に葬ってその場を去った。



 ――もう少し別の判断が出来ていたら、女の子は助かったのかな?


 そんな後悔がいつまでも僕の心の中に残った。



 BAD END 3-1

 

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