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 きっとミューリエは僕の歩みが遅いから、呆れ果てていることだろう。申し訳なくて泣きそうになってくる。胸の奥がキュッと痛む。迷惑ばかりかけてしまって情けない。


 でもだからこそ、こんなところで弱音を吐くわけにはいかない。


 カラカラに干からびた雑巾を圧搾機で限界まで絞って、ようやく水が一滴垂れるくらいの根性くらいしかないけど、それを振り絞って僕は白い歯を見せながら強がる。


「ま、まだまだ……だ、大丈夫だよっ!」


「ふむ、全然大丈夫そうには見えんが? 顔色は悪いし、肩で息をしているではないか」


「う……」


 鋭い指摘を受け、僕は何も言えなくなってしまった。振り絞った一滴の根性が瞬時に蒸発する。やっぱり誤魔化しきれなかったか……。


「限界を超えてがんばろうとするその心根は気に入った。だがな、アレスよ。力には使いどころというものがある。魔王討伐という目的を持って旅をしているなら、いつか必ず絶対に退けないという瞬間が訪れることだろう。今の想いはその時のために取っておけ」


「えっ……? あ……うん……」


 シリアスな中にも強い想いを感じさせる言葉で諭してくるミューリエ。何か思うところでもあるのだろうか? 少なくとも空気が変わっていたのは確かだ。だから僕はちょっぴり戸惑ってしまった。



 絶対に退けない瞬間……か……。



 戦う力のない僕に、果たしてそんな時が来るのだろうか?


 あるいは今後、例え戦う力が備わったとしても、戦わずに世界が丸く収まってくれたら一番なんだけどな……。


「アレス、前方にある大岩の横で休憩するぞ。良いな?」


「……えっ? あっ! う、うんっ!」


 考え込んでいた僕は少し先を行くミューリエに声をかけられ、ハッと我に返った。そして慌てて彼女のあとを追ったのだった。



 →11へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927859763772966/episodes/16816927859764650502

 

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