8
8
レインさんにもプライベートな事情があるかもしれないんだから、あまり根掘り葉掘り訊くのは良くないと思う。
この場はミューリエに注意をしておいた方がいいよね……。
「ミューリエ、あまり深く追求しなくてもいいんじゃない? レインさんが武器を使って戦わない理由がどうであれ、それが僕たちにとって不都合というわけじゃなさそうだし」
「おおっ! ナイスよ、アレス! もっとミューリエに言ってやれっ♪」
「……ふーん、なるほど。アレスはレインの肩を持つのだな?」
いつもはクールなミューリエが珍しくムッとしているみたい。鋭い眼光が僕の心に突き刺さる。裏切ったとでも思われたのかも。
でもそれは誤解だ。決してそうじゃないってことを、きちんとミューリエに伝えないと!
「そ、そういうわけじゃないよ! そもそも僕はミューリエの仲間だからっ、事ここに至ったらミューリエの肩を持つよ! それは神様に誓ってもいい!」
「っ!?」
「ただ、仲間だからこそ言わなきゃいけない時もあると思うんだ。いつも全て同意することが良いとは限らないでしょ?」
真っ直ぐミューリエの瞳を見つめながら、僕は諭すように問いかける。
すると彼女は静かに目を伏せて唇を噛んだ。そして少しの間が空いたあと、フウッと息を吐いて顔を上げる。神妙な面持ちだ。
「……許せ、アレスよ。お前の言う通りだ。私としたことが少しムキになってしまっていたようだ。なんとも大人げない。レインも許してくれ」
「うん、あたしのことは気にしないで。あたしの方こそ熱くなっちゃってたみたい。それどころか助けてもらったことにもっと感謝しないといけなかったのに。ミューリエ、アリガトね」
レインさんとミューリエは顔を見合わせ、お互い照れくさそうに笑っていた。どうやらこの場は丸く収まったみたいだ。
やっぱりみんな仲良くしてくれた方が僕は嬉しい。
「レインの方こそ気にするな。旅先ではお互い様ではないか」
「そうね。貸し借りもチャラになったことだし、ね? ちなみに鍋をご馳走になった件はサービスでいいんでしょ?」
「フッ、そういうことにしておこう」
「じゃ、あたしは先を急ぐからっ。いつまでもあなたたちに甘えてられないしねっ♪」
そう告げると、レインさんは走って先に行ってしまった。ただ、少し進んだところで立ち止まり、こっちを向いて笑顔で手を振ってくれている。
進む方向は同じだから、またいつかどこかで会えるかも。
◆
――その後、僕らも再び街道を歩き始めた。試練の洞窟はもうすぐだ。
でも僕はそもそも洞窟という場所は書物で読んだ知識しかなくて、中に入ったことどころか見たことすらない。だから現時点では期待と不安が半々くらいだ。
そこでは何が待ち受けているのだろう? なんだか緊張してきちゃった!
NORMAL END 3-2
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます