35.祇園
祇園。ここに来ると京都の何でもあると言えるほどお店が連なり、賑わいを見せている。八坂神社側から見ることが多いので反対側はあまりよく知らない。
(わっかんない。お店わっかんない)
甘味処、お土産屋等見ようとすれば見れるものは多いけども、なんせ店が多すぎてどこに入っていいのか悩んでしまう。
漢字ミュージアムとかいうものまであるこの祇園は不思議だ。
(漢字ミュージアム入ったことあるんよな…売店だけ)
入ったことはあるが記憶にない。ただただ文字としての漢字が羅列しているようなミュージアムではなかったはず。少し入っただけなので断言はできない。
漢字ミュージアムを通り過ぎるとスターバックスが見えてきた。コーヒー飲みたい気持ちが大きい。覗いてみると諦めがついた。
(混みすぎや!)
流石大通りに面しているだけある。店内でゆっくり過ごすことは不可。徒歩続行。
(おいおいおい疲れたのに)
この祇園以降の予定は無いので、あとは行き当たりばったり。さて、どうしたものか。無理にここから移動して観光しに行くのもいいけども、そこまでの猶予はない。
(祇園歩くかぁ)
とりあえず祇園歩いていれば何かあるだろうという気持ちが俺の中にはあるらしく、休むことなく観光を再開した。
人がごった返している祇園をひたすらに歩くのだが、1つ、祇園の名物と言えるものが前方に堂々と立っている。俺は今鴨川にかかる橋に立っており、この橋を渡った先の異国情緒漂う縦長の建物。
(すごーい)
ここを通る時いつも気になるのだがこれはどうやら飲食店らしい。簡単に入れそうにないオーラは確認できるので入ることはない。ここに入ったことのある人の話を是非聞いてみたい。これは誰しも気になるだろう。そんな建物の横には細道が続いていて小道に入ることは可能だが前回来た時公開した。大人の店が多かった。幸い明るい時間だったので問題はなかったが、暗かったらどうなっていたことやら。想像するだけで怖い。
(素直に大通り歩くほうが安全や)
スリルを求めて色んなところを歩くのはいいが、それには相応のリスクも伴う。そして、そのリスクまでさえも楽しむ人もいるはず。俺はどうだろうか。まだわからない。これがわかるのはもう少し経験を積んでからだろう。この答えを出す前に先へと急ぐとする。
俺はあることに不安がある。この道に関してだ。知っている人が多いと思うが、この祇園の道はひたすらに大通り沿いに店が立ち並ぶ。つまりこのまま真っ直ぐ歩いたところで何も変化は起きない。何回か来たことある時点でお店の新鮮さも薄い。これではつまらない。
(右曲がるか)
先ほどの異国情緒漂う建物を過ぎて1つ目の信号で俺は右に曲がることにした。変な店がありそうなほど道は狭くもないので安心できるだろう。
(雰囲気全然違う!)
鴨川に並行するように堀に水が流れている。これを掘と呼ぶか小川と呼ぶか微妙ではある。そんな堀のそばには等間隔で盆栽を肥大化したような木が植えられている。その木のせいで少し日は照りにくいけども、木陰で休めるとなればいいものだ。あんまりこの道沿いのお店に興味はない。訂正しよう。そもそも、あんまりお店自体に興味がない。本当に今回の旅も全国チェーンにお世話になりっぱなしで意味がわからない。
「どこでも同じもの」
この言葉の安心感をここで再確認しておく。急に何売っているかわからない目の前のお店に入るよりも、何を売っているか一目でわかるお店に意識的に入ってしまう。理由は簡単で、値段形態がわからないから。どこでも入れるようになれば尚1人旅が面白くなりそうだ。
(無理そうだ)
「性格」この言葉で全て片付けられる。
さて、チェーン店についてはもうどうでも良いとしてここの奥には何があるのやら。
何も無い可能性を不安になる気持ちが半分。初めての道を歩く楽しさ半分といったところだ。あとは小さじ程度の眠気。
(あぁそういえばもうそろそろ終わりか)
昼ごはんを食べていないので時間感覚はわからなくなっているものの、既に昼を迎えていることに気がついた。新幹線は5時くらい。実はあんまり時間は残されていない。
(ここが最期の観光スポットになるのかもしれないな)
祇園が最期の観光スポットになっても時間的にはおかしくない。そう思うとこの景色も鮮明に見えてくる。眠気なんて知らない。
視界が鮮明になったところで俺はこの場所にピッタリな名前が頭に浮かんできた。
「裏京都」
京都らしい日本特有の様式は残されながらも華やかさは無い。華やかさは無いと言えば聞こえは悪いかもしれない。「静寂」とでも言っておけばいいか。治安の悪さは目に見えないだけであるかもしれない。ただ、それさえも隠れきれていない日本美にかき消されそう。それがこの祇園の小道。
(我ながら裏京都とはいい事言ったのでは)
自惚れをしながら先に進むと、そこには新しすぎて目立っている四角い建物があった。
目に入ってしまっては寄るしかない。
(明る!人多!)
この建物には庭と呼べるような芝の自由なスペースが設けられている。様々な人が自由に時間を潰している。目立つは子供の存在。公園とは違い、何も無いが、逆に走り回れる。元気そうだ本当に。
建物内はパン屋やフレグランス屋、変わった飲食店など見れば見るほど面白いお店が多い。そして、ホテルが併設されていた。この建物は2階以降がホテルで1階がお店なのだ。
(こんなとこにホテルあったんか)
初見で見つけるのは至難の業だ。今でもこれがホテルなのか疑ってはいる。次来た時に泊まる勇気は残念ながら無い。ホテルは駅前が楽というのも理由。ここは遠い。
これだけ色んなところにホテルがあるので不思議なホテルがあってもおかしくはない。
(まあいいや)
何とも面白い発見ができたので俺としては満足。さて、ここを出ることにする。喉が渇いているわけでもないのでこのまま歩き続ける。
建物を出て色々歩いてみたがやはりあまり見るところがない。大通りに戻って錦市場などに行ってもよかったがそこまでの時間はなさそう。単にショッピングとしてぶらぶらして過ごすのも悪くはないがあまり気が乗らない。いや完全に訂正して一言で表そう。
(俺は今とても休みたいのだ。)
もう後半になるにつれて何回も言っているけども本当に疲れた。先ほどのスタバに戻って休もうかと考えているが、いっそのこと駅まで戻ってもいいのではないだろうか。
(祇園にいてもやることないからな)
祇園に何しに来たのだと言われそうなくらい何もしていないが単純にやることがない。俺は決心した。京都駅に戻ると。
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