33.円山公園

野球やサッカーの出来ないタイプの公園。どちかというと散歩を目的として作られた公園「円山公園」に俺は来た訳だが、そもそもここに寄る予定もなかったし、ここに公園があったことも知らなかった。


(ちょーー綺麗!)


意外な発見に俺は若干の興奮を覚えている。小川が公園の真ん中に流れ、散歩用の道が存在している。しっかりと全貌が作られている公園だ。


(いい発見だ)


折角来たので散歩がてら歩いているが、どうやら学生が集合写真を撮っている。ここで集合写真を撮るということはそこそこ有名なのだろう。


「はい撮りまーす!」


カメラマンの指示があり、クラスは一斉にカメラマンに視線を集めていた。あまり集合写真撮っている姿を第三者目線で見ることは無いのでなんか面白い。


(俺らって京都の集合写真どこだっけな)


この姿を見てふと思い出そうとしたが全く覚えていない。無難に清水寺とかだったのだろうか。


(そりゃ修学旅行行ったのかなり前だからな)


覚えていなくても仕方ない。だが、何故か小学生の時に行った修学旅行の写真はどこで撮ったか覚えている。よっぽど小学生の時の修学旅行の方が面白かったのだろう。よく覚えている。


「はい!ご迷惑お掛けしました。ありがとうございました」


そうカメラマンは通行人達に声をかけていた。ほとんどの通行人達は集合写真を撮っている学生達を見てほのぼのしてただろうに。悪く言う人も世の中にはいるのだろう。大変な世の中だ。俺なんて集合写真のカメラマンお願いされたら率先してやるのに。絶対無いけども。


(ちょっと上流に行くか)


小川を上る形で道が続いているので、川に沿って少し上ってみる。

上っている感じでは本当に老若男女色んな人が楽しめる公園だということが伝わる。散歩するには最高な場所だ。あまりに上に行き過ぎるのも面倒なので見つけたベンチに腰掛けた。


(あぁ休めるぅ)


もう2日目もそろそろ終盤に差し掛かり、若者でも疲れは見えてくる。360度視界良好なこの公園だが、目の前に何とも眩しいものが現れた。


「はい、撮りまーす」


学生の集合写真ではない。俺の目の前に改めて被写体は、、、ウェディングドレスを着た女性とタキシードの男性。恐らく結婚式の写真だ。


(あぁぁぁぁぁぁぁ!眩しい!)


幸せなオーラが容量を超えて溢れ出ている。それが俺の目には光り輝いてるようにしか見えない。隣に座ってたご老人も微笑ましくその光景を見ている。ご老人には単に微笑ましい光景だとしても若者にとっては眩しすぎる光景だ。まだ結婚を考える年齢ではないかもしれないが、非リア充を貫き通してしまっている身としては眩しくて仕方がない。目の前の新郎新婦は多分20代。年齢は近いと言って問題ないはず。その幸せな光景を見れば微笑まし過ぎて大変だ。


(1人を楽しみすぎてるんだ俺は)


楽しみすぎているという言葉に尽きるが、まぁいいだろう。

ここには木が沢山植えられているが、もしかしたら桜とか銀杏などの色が付く葉っぱ達かもしれない。こんないかにも歩いてくださいと言っている公園で桜が無いわけない。春に来たら桜満開となっているかもしれない。


(春…に来るかな?)


春は何かと忙しくから来れないかもしれない。惜しいことだが日程には抗えない。


(お、新郎新婦退場していった)


撮影を終えたのだろう新郎新婦は笑顔を絶やさぬまま俺の目の前から姿を消していった。

そろそろ俺もおいとまします。


(この公園は友達とは来ないからな。満足!)


この公園かなり広いので全貌はわからないが、1度全てを見てみたいと思わせるような公園だった。広すぎたら疲れるけども。


俺は重い腰を上げ、足に喝を入れて歩き始めた。次の目的地は誰もが知っているあのお寺「八坂神社」。祇園に隣接しているので訪れる人も多い。青蓮院門跡から直行で八坂神社に行く予定だったが、何分いい公園を見つけてしまったので寄り道してしまった。つまり、今どこにいるのかわからないし、八坂神社どこにあるのかわからない。


(おっと!?わからぁぁん!)


とりあえず入ってきた方とは逆の出入口から出たが、いきなり十字路に行く手を阻まれている。


(こういう時はまっすぐ歩くぞ)


迷っても応えは出ないので、曲がることなくまっすぐ突き進むものだ。俺はまっすぐ歩いた。石レンガのような道を突き進み、京都情緒溢れる道を歩いているけども、何かおかしい。


(看板無い…)


近づくと八坂神社を案内する看板があるはずだが、1回も目にしてない。これはおかしい。道を間違えたと考えていいのだろう。


(し、調べるか)


俺は満を持してスマホを取りだし、マップアプリで現在位置を確認した。想像通りだった。


(oh……ミスった)


まっすぐ歩いたのは不正解。十字路を右に曲がることで八坂神社に行けることが判明。てことで、十字路まで戻ることになった。こういうミスは何度やっても面白い。道間違えないとこの道は通らなかったのだ。どんな道も1度通れば発見があるかもしれない。言い訳っぽく聞こえるが実際にそう思っている。


(楽しぃわぁ)


普段の生活では道を間違えることは明確な時間ロスト。だが、ここでは道を間違えることは時間ロストではない。なんなら有意義な時間だとも思っている。


(よし、戻ってきた。正規ルートこっちだったか)


十字路に戻り俺は正規ルートに乗った。坂となっているこの道を下ることで八坂神社に着くらしい。本当にこの道が八坂神社に続いているのか甚だ怪しい感じはする。全然人歩いていないので怪しんでいる。右手には何だかよく分からないほど綺麗な洋館…みたいな家があって超高級住宅地なのかと疑う。


(事件起こるぞこんな洋館みたいなの)


推理小説などを見すぎて、いかにも事件が起こる館にしか見えない。


(俺は探偵ではないので加害者か被害者…どちらにしても嫌だわ)


こんなアホなことを思いながら坂を下り続けている。下っている時に1組だけ観光客は見たがそれ以降は本当に人を見ていない。末恐ろしい。景色もあまり変わらず、右手の洋館は洋館ではなくなっただけで高級そうな建物であることには変わりない。こんなとこには住めない。

ひたすらにめちゃくちゃ整備された道を進んでいると急に「それ」は現れた。


(鳥居だ、八坂神社…着いた?)


とても八坂神社とは思えないがどうやら八坂神社に着いたようだ。あの赤い建物ではないのであっているか不思議ではあるものの多分あっている。


(じゃあ、失礼します)


こうして俺は八坂神社に足を踏み入れた。

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