19.東本願寺
本文
(おいふざけるなよ、バス使う距離だろこれ。と、遠い)
渡月橋から遥々JRの嵐山駅に戻ってきたのだがあまりの距離の長さにうんざししている。友達と来たときは喋りながら歩いたためそこまで距離は感じなかった。だが、1人なのでひたすらに歩いているのだ。渡月橋の時でさえ歩行距離は多かったので足は疲れていた。それなのに追い打ちでこの距離はかなり足にくる。
(体力ないわけではないんだけどな)
体力はある方だと思っているが普段の生活でここまで歩くことは皆無に等しい。慣れないことをすれば体も自然と反応するものだ。
(とっとと電車乗って京都へ戻ろう)
俺は嵐山駅の改札を抜けて京都駅行きの電車を待った。待っている間ベンチで座っていたがやはり京都という都会ではあるものの、どこか田舎を感じる。中心部ではないからかもしれないが落ち着くくらい田舎感がある。
(となりの少年は地元民かな)
ベンチの隣に座っていた少年は地元の人なのだろう。観光客にしては軽装だし1人で旅をするには若すぎる。
(てか、嵐山やっぱりよかったな)
嵐山は京都に来れば必ず訪れているが、何度来ても満足感を得られる。俺は嵐山のリピーターだと胸を張って言えるほど来ている。友達にはよく「なんでそんなに同じところ行くの」と言われるが俺にも残念ながらわからない。自分でも不思議なくらいここには定期的に来たくなる。なんなら俺自身が理由を知りたいくらいなのだ。
「間もなく電車が参ります」
(どうやら電車が来るようだな。乗って京都へ戻るか)
俺は電車に乗り込み着席後すぐに意識が夢の中へと移っていった。
(ふぉ。やべえ寝てた)
「京都~京都~」
日本人はなぜか電車で寝ても目的地が近くなると起きれるという不思議な潜在能力を持っている。俺も起きた瞬間京都駅間近であった。
起きてすぐに京都駅についたので体は起ききっていない。だが、俺は体を起こす暇もなく電車は京都駅のホームに到着した。
(おっとっと)
足がおぼつかないがとりあえず群衆に紛れて電車から降りた。33番線という少し変わった場所にあるホームだというのは説明したが、実は京都タワー側へは簡単に出れる。まっすぐ歩いたところにある改札を出れば目の前は京都タワー。つまりは俺のホテルにもすぐに行ける。ホテルは駅近であることを強く勧める。ビジネスホテルも数多くあるのでホテル選びには困らない。
(ん~ホテルに行くには少し早いか)
時間は4時前。5時頃到着する予定であった俺からするとまだホテルに行くには早い。ここから近くて有名なところだと東本願寺が妥当だろう。
(よし、そこいって帰ってきたらホテルに入ろう)
駅を出て京都タワーを横に進んで行く。駅前は普通の都会の街。スターバックスやマクドナルドなどの飲食店に駅前の象徴ヨドバシカメラ。所々京都らしいような隠れ家的ホテルが見えるので面白そうだとは思うが泊まる勇気はない。口コミを見て考えたい。
そのまま進んですき家の見える十字路に差し掛かるともう東本願寺は見えてくる。標識もあるが「3分」とかなのでもう入口は近い。横断歩道を渡り東本願寺の脇にいるのだが、壁に看板があってこう書かれている。
「今、いのちがあなたを生きている」
(はい?どういうこと)
理解はできない。仏教的な言葉なのだろうが何とも俺には理解しにくい言葉である。宗教の話はあまり触れない方が賢明なのでこのまま入口まで進むことにした。
入り口は結構大きく入場料も取られない。中に入ると敷地の広さに驚く。建物が沢山並んでいるわけではなく、何もない平野の面積が広いのである。とてもゆとりのある敷地でのびのびできる。全ての建物を拝観するのはあまりにも広くて無理そうなので手始めに一番左の建物で参拝をすることにした。
(広いんだがまじで)
さてそんなことを言いながら俺は参拝を済ました。参拝を済まして俺は階段に腰をかけた。
階段とはいっても靴を脱ぐところなので罰当たりではない。
(しかしこのお寺には詳しくないのよね)
実はこのお寺には初めて来ているので何があるかというのはよくわからない。ただ駅に近くて敷地の広いお寺である以上の情報は確保できていない。お寺の堂内は綺麗であったし豪華であったので来る価値はありそうだ。ホテルを駅近にしているのであれば来ることをオススメする。ここまで広々としたお寺というのもあまり見たことない。入り口を入れば全ての建物が見えるのではないかというくらい拓けている。視力がよければよく見えるのだがそうではないのでもったいない。
俺はここで階段に腰掛けながら黄昏て時間を潰した。何をするわけでもなくただ腰掛けて雰囲気に浸って景色を見ている。時折スマホを見てSNSを見たりして時間を潰している。こんなところで何をしているのだと思うだろうが、時間を潰すのにただ座っているのも悪くない。スタバとかで時間を潰すためにコーヒー片手に席につくことがあるだろうがあれと感覚的には同じだ。絶対に違うと言われるだろうが。
(折角京都に来ているのだから京都の街並みを堪能しているということにしとこう。そして、こんなことをするのもまた1人旅の醍醐味だ。ぼーっとしながら黄昏れるということはな)
適度に時間は潰すことができたので俺は東本願寺を後にしてホテルへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます