4.新幹線車内
これで素直に寝れるならばよかったのですが、案の定全然寝れない。それもそうだ。しっかりと小説を書く気が満々だったのにも関わらず急遽そのプランが破断。缶コーヒーを飲んだことで俺の頭には程よくカフェインが回っているという状況。果たして寝れるだろうか。寝れるわけない。通路側ということもありお見事に景色など到底見ることなど不可能に近いし、流石に景色にそこまで興味もない。席の移動も考えましたが定期的に車掌さんが見回りに来て席をチェックしているのでそれも不可能。ほう、完全に詰みのようですね。
てことで、日本人が電車でよくやる秘儀「寝たふり」をするしかない。これは日本でしかできない秘儀であり、海外でやったら間違いなくスリにあう。しかし幸いここは日本の電車の中でも上級車両である新幹線。下手な犯罪なんて起きうるわけがない。しかし、寝ているだけもつまらないので俺の周辺の乗客を見てみるとする。暇なので。
軽く見まわしたころ把握できたのは4人。1人は俺の隣で早速睡眠の世界へ旅立ったおじさんサラリーマン。
(もう寝たのかよ)
このおじさんに対して言うことはない。次は俺の横の3列席に真ん中に座っているこれまたサラリーマンらしき人物。パソコンで何か作業しているらしく真剣な眼差しでパソコンへと向かっている。これ以上の情報はなさそうか。
そして、左前らへんに座っている2人組の女性で全てか。この2人組の女性は多分友達同士なのだろう。私服で和気あいあいとした話声が聞こえるので合っていると思うのだが、年は俺よりも少し上だろう。これで年上でなかった場合世の女性から大バッシングをくらうからむやみな憶測で年齢を判断するのは辞めておくのが賢明か。女性という生物はとても怖いもので、敵に回したら男は勝てないという現代生態系のピラミッドが作られている。おっと、これも女性に話したら怒られてしまうので反省しておく。
何はともあれ俺の周りにはビジネス目的の人が2人に観光目的が2人と俺となるので、マジョリティは俺たちの方になるわけである。マジョリティだからといって何もあるわけではないけれどもボッチよりいい。周り全員サラリーマンだったら気が気ではない。
さて、そろそろ新横浜に到着する頃だろうし、この状況に完全に慣れたので寝るとする。寝過ごさないことを祈っておく。
(では、おやすみ)
(ん、今、どこだ)
俺は少しばかり寝ることができたようで、お目覚めしたのだが果たしてここはどこだろう。新幹線だ。いや違う、どこら辺を走っているだろうかが適切な質問か。俺は号車の前にある電光掲示板を見つめた。そこにはこう書いてあった。
「次は名古屋」と
実はこれ全く当てにならない。なぜなら新横浜の次が名古屋であり、新横浜から名古屋はとても長いのでこの掲示がされているのは当たり前なのだ。名古屋の次は京都で名古屋京都間は短いので電光掲示板に名古屋が記載されていなかったらその時点で「寝過ごし確定」だ。さてと、くだらないことで頭を働かせたので多少は頭が冴えた。俺は大人しくスマホの地図アプリで場所を確認することにした。これが一番手っ取り早い。
(えっと今は、浜松らへんか)
思っていたよりも寝ていないようだ。だが、仮眠程度にはちょうど良い。ちなみに隣のおじさんはまだ寝ている。いらない報告をしたところで、何をするか考えよう。おじさん寝ているならば小説を書いても問題ないのでなかろうか。傍から見ればパソコンで何かしている若者にしか見えないので恥ずかしくない。
(よし!これはやれる!)
心の中で意気込んだところで早速パソコンを起動。Wordファイルを開いて執筆を始めたのだが、1つ気づいたこととしてWI-FIを繋いでいないということだ。できればWI-FIは繋いでおきたいので、新幹線WI-FIを使用することにして接続したのですが何かおかしい。
(全然ネット繋がらない。なんで)
どうやら新幹線のWI-FIは使えないくらい通信速度が遅いようで、全く意味がない。これは俺のパソコンが問題なのか新幹線のWI-FIが問題なのかわからないが繋がらないのではしょうがない。デザリングしてネット接続を試みた。そしたら意外と快適にネットに接続できたのでこれで執筆を開始しよう。
「次は名古屋」
どうやらそろそろ名古屋らしい。あまり執筆はできなかったけれども少しは進んだようでよかった。ちなみに隣のおじさんは先ほど起きたのだが降りる気配はないのでこのまま京都までは同行が確定してしまった。もはやここまで長くいれば謎に親近感は、、湧いてこないな。名古屋ではかなり人の乗り降りが多かったので停車時間が少し長いように感じた。名古屋を出たらもう京都がすぐそばなのでパソコンを閉じて準備をしておこう。
パソコンを閉じたりトイレに行っていたらもう京都に到着するアナウンスが流れた。本当に名古屋からは近いようで私は席と隣のおじさんに別れを告げた。
(さらばおじさん)
(ドア開閉音)
俺は京都の地にやっと降り立った。長いようで短い新幹線の移動はこれで終了。ここからやっと観光が始まると思うとワクワクが止まらない。アドレナリンが湧き出てくる。
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