3.新幹線乗り込み

やっと新幹線は到着した。俺は到着前に乗車予定の号車の前でスタンバイしていたので誰よりも早くこの新幹線に乗れるのである。小さいことだが嬉しい。

新幹線内では窓際席に電源プラグがあり、充電できるのだが俺はトイレに行きやすいという理由で通路側に席を取っていた。ご時世的にそこまで新幹線の乗車率は高くないだろうし席が間引きされているだろうからお隣さんはいないだろうと勝手に考えている。

感染症対策は大事だから間引きされた席でのびのびと過ごせるというのが俺のプラン。しっかりとパソコンも持っているので、小説の続きを音楽聞きながら執筆する気満々だ。


(めっちゃ捗りそう!)


考えるだけでも最高な環境だ。自分に酔う気はないが、すごくそれっぽいことではないでしょうか。いやぁ楽しみだ。


(ドア開閉音)


俺はまるでRPGの始まりのダンジョンの入り口に入るかのように意気揚々と新幹線に乗り込んだ。さっそく席に着席するとしよう。私の席は号車の真ん中らへん2人席の通路側なのだが


(あれ)


そこには俺の想定している光景とは何か違うような気もする。何が違うのかというと私の席と思われる場所の目の前に人がいるということなのだ。


(そこ俺の席だよな)


その時俺は勝手に思い込みで判断したことをとても後悔した。そう、逆側の3人席に座る人ではなく私の席の隣。いわゆる2人席窓側に席をとった人であったのだ。


(なんでだぁぁぁあぁぁぁぁ)


間引きなんてされていなかった。ただし、乗車率は少ない。つまりどういうことか。席が滅茶苦茶空いているにも関わらず同列の2人席に2人座っているという不思議な光景が出来上がっているのです。目の前の2人席には誰も座っていない。ちなみに、後ろの2人席にも誰もすわっていない。


(いやぁぁぁぁぁ気まずいぃ)


これで俺が電源プラグを使用できる望みはかなり薄くなった。この人がどこで降りるかで話は変わるが、新幹線のぞみの停車駅は「東京、品川、新横浜、名古屋、京都・・」なので私の目的地までで降りる可能性があるのは普通に考えて「名古屋」一択。結局2時間は一緒に過ごさないとならないことは確定。最悪だ。


「あ、どうも」


一応軽く挨拶はしました。聞こえるか聞こえないかわからないくらいの小声で会釈付きで。ものすごく嫌な顔されました。あちらも隣に人がいると想定していなかったのか、それとも大学生が隣なのが嫌なのか。どちらでもいいです。なんでこんな空いているのにおっさんと一緒に旅しなければならないのですか。お互いに嫌ですよ。

そんな感じで着席すると新幹線はスタートやっと旅の始まりです。


(新幹線で何してようかな)


当初の予定は完全に破綻。最初からパソコンを開く気になりませんし、知らないおっさんの横でひたすら小説書いているのはなんか恥ずかしいので嫌なのです。


こうなればやることは1つ


(おやすみなさい)

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