そのままの君が好き
日々菜 夕
そのままの君が好き
三毛猫の王子様は、今日も可愛らしい娘に囲まれて楽しそうにおしゃべりをしていました。
それを、少し離れた所から羨ましそうに見つめる白猫さん。
白猫さんには、コレと言った特徴のない普通の真っ白な猫さんでした。
まあるいおめめが可愛らしいスコティッシュフォールドちゃん。
きれいな縞模様が素敵なアメリカンショートヘアちゃん。
ふさふさとした豊かな長毛に身を包んでいるペルシャちゃん。
他にもたくさんの娘に囲まれていて、近づけそうにありません。
それでも、三毛猫の王子様とお話をしてみたい白猫さん。
なんとかして自分の存在に気付いてもらう方法はないものか?
一人寂しくお家に帰った白猫さんは思います。
自分の描いた絵を見つめながら思います。
このキャンバスのように、鮮やかな色彩で着飾れたら三毛猫の王子様も気付いてくれるかもしれないと。
そして、なるべく目立つようにと、絵筆を走らせます。
真っ白い身体をキャンバスにしてまあるいピンク色をちりばめます。
白猫さんは、白とピンク色のブチ猫さんになっていました。
少しおどおどしながらも白猫さんは、集会場となっている中央広場へと向かいます。
途中で出会ったマンチカンちゃんからは、
「なんか、前衛的で素敵ね」
と言われて、きげんが良くなる白猫さん。
きっと、これなら三毛猫の王子様にも気付いてもらえる。
お話が出来るかもしれない。
ワクワクしながら集会場につくと、
「あら、見かけない娘ね」
メインクーンちゃんに声をかけられました。
すると、次々に色んな猫さん達から賛辞が降り注ぎます。
白猫さんは、上機嫌で三毛猫の王子様に視線を向けます。
背筋を伸ばして尻尾も伸ばして訴えます。
私は、ココにいますよと。
それなのに、三毛猫の王子様は、プイっと横を向いてしまいました。
白猫さんは、しゅんとうなだれてしまいます。
家に帰って反省会です。
何がいけなかったのでしょうか?
白とピンク色という単純な組み合わせが悪かったのでしょうか?
そこで、三毛猫の王子様を真似て、もう一色たしてみることにしました。
今度は、黄色です。
これで、同じ三色。
きっと、これで三毛猫の王子様も振り向いてくれるに違いありません。
それなのに、結果は残念なものでした。
周りの娘からは、キレイとか、可愛いとか言ってもらえたのに。
肝心な、三毛猫の王子様はプイっとしただけではなく。
「今日は、気分が悪いから帰る」
と言われてしまいました。
再び、反省会です。
いったい何がいけなかったのでしょうか?
白猫さんには、分かりません。
答えが出ないまま、何日も何日もたちました。
そして季節が移り変わり寒い冬が終わり春がやってきました。
カラフルだった毛は全て抜け落ちてしまい。
元の、ただの白猫さんに戻ってしまいました。
白猫さんは、歩みます。
しゅんとうなだれながらも歩みます。
久しぶりに、三毛猫の王子様を見たくなったからです。
中央広場に行くと、やっぱり三毛猫の王子様は居ました。
たくさんの娘に囲まれて、楽しそうにしていました。
それを少し離れた所から見ているしかない白猫さん。
すると、突然周りの娘達がざわめきだしました。
三毛猫の王子様が、白猫さんに向かって歩み出したからです。
何事かと思い、驚いている白猫さん。
白猫さんの前で、三毛猫の王子様は足を止めます。
「やぁ、久しぶりだね」
「あ、はい、お久しぶりです」
白猫さんは、自分が話しかけられていると知ってビックリです。
「やっぱり、キミはそのままが一番素敵だよ」
「え?」
白猫さんは、三毛猫の王子様の言っている意味が分かりませんでした。
「雪のように白い君が、ボクは一番好きだって言ったのさ」
にっこりと笑みを浮かべる三毛猫の王子様を見て白猫さんは、ようやく気付きました。
無駄に着飾らない、素のままの自分で良かったのだと。
足りなかったのは、一歩踏み出す勇気だったのだと。
おしまい
そのままの君が好き 日々菜 夕 @nekoya2021
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます