神話の続き
第85話 神話の続き
世界が揺れたかと思うほどの地震が収まる。
「収まったの?」
「す、すごかったな。南海トラフってやつか?」
校庭で倒れこむ生徒が次々と立ち上がる。
揺れが収まり何とか気持ちを整えた、そして彼らの前に。
「ピギピギ!」
「え? なにこれ?」
丸い塊が跳ねていた。
まるでスライム、ぶよぶよして柔らかそう。
「ちょっと可愛いかも」
「ピギピギ! ブッ!」
「え? あ˝、あ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝ぁ˝!!!」
そのスライムが吐いた液体にかかった生徒の皮膚が焼ける。
強力な酸性の液体を吐いた、その液体は防御力0の少年を簡単に溶かす。
「キ、キャァァアl!!」
後ずさる生徒達、そして背後に立つ緑の鬼。
「ゲヒヒッ」
その鬼が持つ剣が生徒に振り落とされそうになる。
「いやだ……なんで? いや! いやぁぁ!!」
ザシュッ!
「え?」
振り下ろされる剣。
しかし鬼の物ではない。
真っすぐに振り下ろされたのは。
「大丈夫か!」
「み、御剣君?」
(何が起きてる。なぜ魔物達が外に。それにどこから)
何が起きているかわからない。
それでも今剣也達ができることは、学校の生徒達を守ること。
「全員体育館へと避難するぞ! 僕は御剣剣也! ダイヤ級探索者だ。指示に従ってくれ!!」
大きな声でグラウンドに響かせる。
広がっていては守ることができないので、体育館へと避難する。
自分の肩書が効果があるならと最大限利用する。
効果は絶大だったようで、全員が混乱しながらも指示に従い避難を開始した。
「美鈴! 指輪を!」
「はい!」
スライムに大火傷させられた少女に指輪をはめる。
見る見るうちにケガが治り、痛みも引いていく。
しかし安堵している暇はない。
あたりを見渡せばいくつもの魔物達。
それほど強い個体はいないようだが、装備品を持たない生徒達にとっては、化物と同じ。
だから…。
「美鈴! みんなの先導を頼む! レイナ! 魔物達を倒すぞ!」
「わかりました!」
…
「一体何が起きてんだよ…」
体育館へと集まった生徒達。
点呼を取って確認すると、犠牲は0だったようだ。
剣也の迅速な対応が功を奏した。
ケガをした生徒達には完治の指輪を順番に装備させる。
震える生徒達を先生たちがなだめている。
学校内の魔物を一通り掃討した剣也が体育館に戻る。
「これは一体なにが起きているんだろうか」
「弱い魔物とはいえ、現実に現れるなんて」
田中夫婦と剣也、レイナと美鈴。
そしていくつかの先生達が今後の方針を話し合う。
「わかりません、しかしダンジョンが光り輝いているのだけは見えました。多分なにか関係が」
「お、おい! これみろよ!」
すると一人の生徒がスマホを見せる。
剣也達もスマホを開くと、緊急ニュースの通知が流れる。
緊急記者会見が現総理大臣から行われる。
迅速な対応でスーツではなく、作業服で会見を始める。
「単刀直入に発表いたします。本日18:00に発生した大地震ですが、世界中で発生したものと確認いたしました。
加えてもう一つ、世界中で東京ダンジョンの中に生息する魔物達と同様の存在が確認されております。
現在有識者と対応策を検討しておりますが、最寄りの避難所に避難、もしくは家から一歩も出ないようにお願いします。
くりかえします…」
「そんな……世界中で?」
すると田中がスマホを開く。
神妙な面持ちで画面を見た。
そして剣也とレイナに頼む。
「……剣也君危険だが私についてきてくれるか? レイナ君も。ダンジョン一階層へ」
「なにかあったんですか?」
「今有識者と検討とあっただろう、そこに私も呼ばれているようだ。宵の明星の責任者としてね。もちろん龍之介も。君も来た方がいい。ダイヤ級として」
有識者会議が行われるらしい。
場所は件の塔の一階層、会議室。
「でもここの守りが…」
「それなら任せなさい! これでも元トップギルドの団長よ!」
すると田中みどりさんが胸を張る。
装備品も装着している元トップギルドの団長が守ってくれるなら安心だ。
「先輩! 私もみんな守りますから!」
美鈴もサポーターだが装備品は優秀だ。
先ほどの敵ぐらいなら問題ないだろう。
剣也は思案する、しかし時間がないので決断した。
「わかりました。よろしくお願いします! レイナ行こう!」
「はい!」
「では済まないが、護衛を頼む。私も装備品を付けているとはいえBランクほどだ。対応できないものがいるかもしれない。場所はダンジョン一階層」
「もう行きますか?」
「あぁ、事態は一刻を争う。初動が命だ」
「わかりました」
そして剣也と田中一世がダンジョンへと向かう。
(母さんは無事なんだろうか……)
剣也は移動しながら旅行にいってる母を心配する。
世界中で発生していると言っていたので多分母さんがいる地域も…。
スマホで電話する剣也、どこにいるかも知らないので助けようもない。
しかし回線が混雑しているようで繋がらないのでメッセージだけ入れておく。
…
「ダンジョンでは見たことのない魔物も多いですね」
「あぁ、特に龍だな。あれは装備品としては龍の羽衣などがあるのでいるのだろうと思っていたが…」
移動しながら阻む魔物を剣也が倒している。
強さはまちまちで10階層レベルもいれば30階層レベルと強さに幅があるようだ。
しかし強くても30階層レベル。
それ以上の魔物は現れていないのかもしれない。
剣也の学校からダンジョンはそれほど離れておらずすぐに到着することができた。
相変わらずダンジョンは光り輝いて眩しいまでの輝きを放つが中に入ると光は収まる。
「剣也君! 田中さん! 来ていただけたんですね。こちらへ!」
一階中央ロビーで愛さんが僕らを案内する。
ダンジョンは避難と災害対策、魔物対策でお祭り状態。
そして案内された巨大な会議室には、多くの有名人が集まる。
宵の明星をはじめとするトップギルドと呼ばれる多くのギルドメンバー。
「一世さん無事でしたか、姉貴はまぁ大丈夫か。坊主も来たんだな」
「みどりさんが学校でみんなを守ってくれています。一体なにがあったんですか」
「いや、俺もわからねぇ」
そしてテレビでよく見る顔の人が声をあげる。
「これで全員か。初めましてのものも多いな。私は八雲 明。 日本の防衛大臣をやっているものだ」
日本の防衛大臣が話し出す。
ダンジョン協会の上の組織が防衛省。
つまりこの人がダンジョンに関するこの国のトップということだ。
会議に集まっているのは、ダンジョン協会の会長、トップギルドメンバー、田中さん、佐藤の親。
そして剣也、レイナ、お国のお偉いさん、護衛の方々。
「まずは、状況を再度確認しておこう。本日18時に発生した大地震。震度6と観測されたが、これはプレートのずれによるものではない」
(大陸プレートのずれによる地震じゃない? じゃあなんなんだ)
「はっきり言って理由はわからない。しかし全員その目で確認しているだろう。空を飛ぶ龍、地を闊歩する鬼たちを」
「やはりダンジョンが関係していますか」
田中さんが声を上げる。
「あぁ、田中君。私はそうみている、光り輝いたこのダンジョンがこの現象の原因か、もしくは付属したものか」
その時だった。
天道龍之介、蒼井レイナ、御剣剣也の脳にいつものあの声が響く。
『まだ間に合う。早く』
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