第8話 学校でいじめにあいました。いつか絶対殴ってやる

翌日 月曜日。


 世界一嫌われている曜日が始まった。

かくいう僕もその一人。

いまは、学校よりもダンジョンに行きたいし、昨日の佐藤の表情が気になる。


 嫌な予感を感じ、足取りを重くしながらも僕は登校する。


「よお、御剣」


 登校した僕を、待ち構えていたように佐藤は教室のドアにもたれ掛かり待ち構えていた。


「あぁ」


 僕は、ぶっきらぼうに挨拶をして自分の席に向かう。

しかし机の上には、落書きがしてあった。

それを見た僕を見て佐藤は、笑う。

周りの取り巻き達もクスクスと笑いだす。


 なんて幼稚ないじめなんだ。

僕は、すぐに雑巾をとってきて拭こうとする。


 そしてその落書きの文字をみて、動きが止まる。

そこには信じられないことが書かれていた。


【お前の妹 援交してんだろ? 俺にもやらせろよ】

【御剣奈々ちゃんは、おやじのXXXが大好き】

【金で誰にでも股を開くビッチ】


 どこから漏れたのか。

それはわからない、きっと妹が連絡した不良からとかそういうのだろう。

佐藤が昨日妹をみていたのは、そういうことだったのか。


 奈々は、同じ高校の一年生だ。

学年でも美人と評判で、人気者。


 だから佐藤も知っていたのだろう。

そしていろいろ調べた。その結果がこれか…。


 僕は怒りで震えた。

自分のことは別にいい、でも妹のことは許せない。


「おい! 佐藤!!」


 僕は自分でも信じられないぐらい低い声で、佐藤を呼ぶ。

握った拳が震える、自分の力で血が出そうになる。


「お? なんだ? 怒ったのか? やっぱり本当だったか? ははは!」


「違う! 奈々はそんなことやってない!」


「いいって、別に隠さなくても。お前ん家貧乏なんだろ? モヤシばっかり食ってんだろ? なんなら俺がお前の妹買ってやるよ! 千円でいいか? ぎゃはは!」


 下品な笑いで佐藤は、剣也を笑う。

なぜこんな奴が聖騎士なんだ、職業『ゲス』とかでいいだろ。


 僕は怒りに任せて佐藤に殴りかかる。

しかし、避けられ、簡単に殴り返される。


「無能がよ! 雑魚が、歯向かってんじゃねーよ!」


 案の定僕は地面に倒れる。

力の差がありすぎる、僕には妹の汚名をそそいでやることもできない。


「おーい! みなさん! この御剣剣也君の妹はパパ活してまーす!」


「まじ?」

「結構可愛い子じゃなかった?」


 佐藤が、さらに剣也を煽る。

周りの佐藤の取り巻き達も合わせて笑う。


「ビッチ! ビッチ! ビッチ!」


 取り巻き達が、コールをする。

手拍子に合わせて大きな声で何度僕を煽り、僕を、奈々を、笑いものにする。


「取り消せぇぇ!!」


 取り消せとなんども立ち上がるが、そのたびに殴られて地面に倒れこむ。


 痛くて、悔しくて涙がでる。

僕が弱いばかりに妹までもが理不尽な目にあう。


「こいつ泣いてるぜ? ちょっと可愛そうになってきたな、ほら」


 そして佐藤は僕に小銭を投げる。


「拾えよ、貧乏人。施しだ」


 投げられる小銭、教室には僕の嗚咽と金属音だけが鳴り響く。

目の前に転がる我が家の一日の食費に無意識に一瞬手が出そうになった。

そんな自分をより一層惨めに思った。


ガラガラガラ


「おーい座れよ~」


 先生が来て、騒動は一旦終わる。

なにがあったかと聞かれるが、なにもないというしかなかった。


 もし追及されれば、奈々の元にまでこの話がいってしまうかもしれない。

だから僕は黙って落書きをふく、濡れた机さらに僕の水がこぼれる。

それをみて佐藤は笑う、取り巻きの不良たちもゲラゲラと笑う。


 惨めな思いのまま、剣也は下校した。

そしてダンジョンへ真っすぐに向かう。

悔しさを、惨めさを、怒りに変えて。


 どこかの漫画で言っていた。

『怒れ。許せないという強く純粋な怒りは、手足を動かすための、揺るぎない原動力になる。』


 僕はその名言通りに怒りをため込んだ。

あの時発散できなかった佐藤への怒りをためにため、僕はダンジョンに潜る。


 明日は学校を休むと伝えてあるし、愛さんには明日まで過ごすつもりだと伝えている。

だから今日は、全力でダンジョンに挑む。


 目指すは、騎士シリーズのコンプリート。

そして、騎士シリーズを進化させ、その上も。

そして…。


「佐藤をぶん殴ってやるんだ!!」


 その一心から剣也は、兵士シリーズの腕輪をかき集め、錬金を繰り返す。

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