第5話 金の予定ができました。

「な、なんでそれを!!」


「すまん、お前のスマホにメッセージが移っているのをみてしまった」


(実は指紋を押し合ってて開いてしまったのだが、それは黙っておこう)


「そ、そうなんだ。で、でもしてないから心配しないで?」


 これは事実だろう。

なぜなら昨日みたメッセージでは、まだ話は進んでいなさそうだった。


「お前が家族のために犠牲になる必要はない…」


「で、でもだからってお兄ちゃんが犠牲になる必要もないよね! キャ、キャバクラとか! そういうのだったらあり?」


「高校生が、そんなとこで働けるわけないだろう。お前はしっかり勉強しろ、それが仕事なんだから」


「でも、お金ないじゃん! 大学だっていけないんだから勉強する意味ないよ!」


 奈々が、両手を机にドンっと叩く。

身を乗り出して、自分の意見を通そうとする。


 そこで、剣也は装備していた騎士の小手を取り出し、机に置いた。


「これを見ろ」


「こ、これってもしかして騎士シリーズ!? うちのどこにそんなお金が…。そ、それよりまたお兄ちゃんまた探索者になったの?」


 一年前、剣也は高校生になったと同時に探索者になった。

半年ほど活動して、無能ジョブだと追放されたが…。


「そうだ、兄はこの騎士シリーズを手に入れれるほどになったんだ」


「この装備品って、家賃三か月分ぐらいだよね…1月牛丼が食べられる、しかもつゆだくだくで…」


 奈々は、涎を垂らしながら小手を見る。

やめろ、それは小手だ、牛丼じゃない。

それと、つゆだくだくは無料だぞ。


 さすがは俺の妹だと、確かな血のつながりを感じながら剣也は話を進める。


「つまりだな、お金に余裕ができる…と思う。だから身を犠牲にするなよ、特にパパ活…」


「わかった! わかった! パパ活はしないから! お兄ちゃんからそういうこと言われるとすごい嫌だ…」


 肉親に性的な話をされるのは、誰だっていやだろう。

俺だっていやだ。


「わかってくれたならいい。大変だけど兄ちゃん頑張るから」


「うん…私もバイト頑張る!」


 そしてその日は珍しく満たされた気持ちで二人仲良く隣で寝ることができた。

隣で寝るスペースしかないのだが…。


そして翌日 朝。


 剣也は、またダンジョンへ立つ。

そして巨乳の…いや、愛さんのもとにいく。


「おはよう、剣也君! 今日も二階層までね?」


「はい! しばらくは兵士シリーズを集めようと思います! もし鉄の剣も拾えたら拾えるぐらいの気持ちで!」


「じゃあ頑張ってね。予定は…昨日と同じ17時でいい? それ以降は救難要請だすからね?」


「はい!」


 そして剣也は、いつも通り中央の赤いゲートに入る。

他にもゲートはあるが、あれは使えない。

10階層、20階層などへの安全地帯へのゲートだ。

僕はまだ使えない。


 そして転移するのは第2階層。

2~9階層までは、武骨な石に囲まれた迷宮となっている。

しかしすべて踏破されているため地図が出回っているから迷うことはない。


 ところどころに、立て札もあるのでなおさらだ。


「よし! 頑張ろう!」


 そしていつも通りダンジョンを回る。

そしてゴブリンを倒す。


「ギャア!」


 すごい、これが騎士シリーズの力…。

剣也は、いままで苦戦していたゴブリン相手に余裕の戦いをしていた。


 ゴブリンは、素の状態ですら簡単に勝てる相手だが人数が多くなると厳しくなってくる。

しかし騎士シリーズを付けた今の剣也の相手ではなかった。


 そしてゴブリンからドロップした兵士の小手を拾う。

奥にある宝箱にも同じものがある。


 夕方まで駆けずりまわり二十個の小手を集める。


「さぁ、お待ちかね。錬金タイムだ」


 レベルアップ♪ 兵士の小手Lv2

 レベルアップ♪ 兵士の小手Lv3

      ・

      ・

 レベルアップ♪ 兵士の小手Lv9 

 進化♪     騎士の小手Lv1


「今日できるのは、ここまでだな。一日十回しかできないのがネックだ」


 騎士の小手と兵士の小手10個をもって、今日はダンジョンを後にした。



「おかえり! 今日は時間を守ったね、偉い偉い」


 目の前に座る愛さんに頭をなでられて僕は、気持ちよさそうに目をつぶる。

あぁ、バブみを感じる。


(やだ、なにこの生き物かわいい♥)


 中野愛は年下好きだった。

なすが儘なでられるこの可愛い顔の高校生が結構タイプだった。


「あ! 愛さん!」


「ひゃい!?」


 変な妄想をしていたところに、いきなり話しかけられて変な声が出る。


「ひゃい? まぁいいや。今日は換金したいと思ってます」


「か、換金ね? OKOK! 問題なし! 兵士の小手? 見せてみて!」


 そして、剣也は出しづらそうに騎士の小手を出す。

今日だけだ。

今日だけ、おいしいものを食べさせたやりたい。

しばらく外食もしていなかった妹と焼肉でも食べに行きたいし、服も買ってあげたい。

 

 だから…。


「これを…」


 そして剣也は、騎士の小手を机に置いた。

 

「はい、兵士のこて…ええええぇぇ!!??」

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