第3話 貧乏ですが、錬金術師はレアジョブです

『スキルレベルアップ♪ Lv10になりました。錬金可能ランクがDランクに上昇します』


「錬金可能ランクがDランクに上がった!? 錬金回数じゃなくて?」


 その脳に直接流れたアナウンスのとおりの意味で、受け取れば、最下位ランクしか錬金できなかったのが、Dランクも錬金できるようになった。

ということだろうか。


 Dランク装備など僕には用意できないため試すことができないが…。

すると僕の気持ちを汲んだのか、アナウンスが信じられないことを告げる。


『またEランク装備+9を、追加で錬金した場合Dランクへと進化します』


「ど、どういうことだ? 進化? 装備が?」


 僕は動揺し、大きな独り言を一人で言ってしまう。

装備が進化するなんて話は聞いたことがない。

確かに兵士の小手に始まる兵士シリーズの完全に上位互換ともいえる装備は存在する。

さらにその上も…。


 しかしそれらはダンジョンでドロップするもの。

基本的には、効果が似ているだけで関係していないはずだった。


 僕は、右腕につけた兵士の小手+9を見る。

そして、今日もう一つだけ手に入れた兵士の小手も。


 錬金回数は、日に9回なのであと一度だけ残されていた。


「や、やってみるか…」


 そして僕は、いつものように錬金! と唱える。

いつもなら、これ以上錬金できませんというメッセージが脳内に流れるのに、今日だけは違っていた。

やわらかい光に包まれながら、兵士の小手は、見る見る形を変えていく。


 そして流れるアナウンス。


『錬金に成功しました。兵士の小手+9は、騎士の小手になりました』


「え、えぇぇぇ!!!!????」


 たった一人、暗い部屋に僕の叫び声だけが反響する。

おもわず叫び声をあげてしまった。

狭い部屋でこだまする自分の声を聞いて、興奮する心をなんとか落ち着ける。


「これは、もしかして錬金術師の本領は進化か?」


 僕がみたものは、テレビ越しで見たあのDランク装備。

これ一つで、十万円に近い値段で売られている。

それこそダンジョンでいうと、11階層以降にしか出土しないアイテムだ。


 その装備が僕の手の中にある。

これ一つで、三か月分の家賃。


 ゴクッとつばを飲み込む音が自分から聞こえた。


「う、売れば毎日牛丼大盛、いや温玉だってのせれる…」


 久しく米を食べていなかった僕は、強くなることよりもお金が、お米が欲しいと思ってしまう。

しかし、その考えを振り払うように大きく頭を振る。


「だめだ、だめだ! せっかく手に入れたDランク装備だぞ! これを使ってもっと稼がなくては」


 そして僕は立ち上がる。

すでに満身創痍だが、希望を得た体は、水を得た魚のように力がみなぎる。


「奈々、これで兄ちゃん稼げるかもしれない!」


 錬金術師のジョブの可能性に胸を膨らませる。


 そして騎士の小手をはめてみた。

すると気のせいではなく、本当に力が溢れてくる。

騎士の小手を見つめると、情報が表示される。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

【騎士の小手】

説明:騎士が装備する小手。兵士に比べて格段に強化される。

能力:攻撃力が+20される。Lvに応じて+1

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「ステータス!」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前:御剣剣也

DP:0pt

職業:錬金術師

・錬金Lv10:次のレベルまで1000pt

(ランクDの武器を日に10回錬金できる)


◆装備品

武器:【鉄の剣Lv2】

頭 :【兵士の兜Lv9】

胴 :【兵士の胸当てLv9】

手 :【騎士の小手Lv1】

足 :【兵士の具足Lv9】


◆ステータス

攻撃力:0(+24)

防御力:0(+10)

素早さ:0(+10)

知 力:0(+10)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「これが、Dランク装備の力か…」


 力が二十程度の上昇では、筋トレしたマッチョ程度にも勝てないが、それでも各段と強くなったように感じる。


「この調子で、兵士シリーズを集めれば、騎士シリーズのコンプリートも夢じゃないか?」


 その日は、満身創痍のため探索を切り上げる。

今は、この装備を妹に見せてやりたい。

お金の心配はしなくていいと、見せてやりたい。


 剣也は、疲れた体を忘れて、駆け足でダンジョンの一階層へと走っていく。

新しい力を得てわくわくが止まらない。


「あった、ゲートだ」


 そして、一階層への青いゲートを見つける。

階層の移動は、階段ではなくこのゲートを使う。

青いゲートが、一階層戻るゲート、赤いゲートが次の階層へ行くゲートだ。


 そして僕は、ゲートをくぐる。



「お帰り! 剣也君!」


 そこには、綺麗で巨乳の眼鏡お姉さんが待っていた。

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