第12話 御の字は、結果オーライっていう軽い意味じゃないから。ほとんどの人が、間違っている?正しいケアにならなくなっちゃうぞ。

 教授の、介護?

 これも、ケアなの?

 「ヤングケアラーの、闇。でも、逆らえない。逆らっちゃったら、契約が切られるかもしれないんだし…」

 ひどいよ。

 「明日からこなくて良いよって、言われちゃったら…。どうすれば良いの?」

 身分ある人は、良い。

 弱い立場の人のことなんて、どうでも良く感じられただろう。強い、皇帝気分。

 自分だけ良ければ、それで良い?

 オンリーワン。

 世界に1つだけの、何とやら。

 「私、どうしたら良いわけ?」

 彼女の任期は、アンバランスなともしび。

 「君には、また、働いてもらおう」

 そう思ってもらわないと、困る…。

 「契約更新で、お願いしようかな」

 そう言ってもらわないと、困る…。

 契約更新は、命を保証してくれるほど、御の字。

 ちなみに、御の字というのは、御という字がつくくらい感謝したという意味だから、本来は、最高のこと、大いにありがたいことを指した言葉。

 御の字間違いに注意、かな?

 たまに、こう言う人がいる。

 「何かさあ、結果オーライって感じかな?そこそこ、何とかなっちゃったね。第2志望だったけれど、まあ、良いか。御の字、御の字」

 それ、違うから。

 「まあ、良いか。ギリ、セーフ!そこそこ、上手くいった。御の字」

 いや。

 そういうのは、御の字って、いわないから。

 御の字っていうのは、最高の、願ったり叶ったりのことだから。

 第一志望の何かを得られたときに、使ってよ。

 「御の字だったよ!最高だったよ!」

 そんな感じで、言ってよね。

 「…って私は、何、正しいことを思っちゃっているんだろう?」

 彼女は、今どきの学生言葉のやりとりを思い出していて、御の字の復習をしていたのかもしれなかった。これって、職業病?

 彼女の、研究者身分の弱さからくる悩みは、続いた。

 「なあ。君?」

 「は、はい!」

 「今夜、一緒に、食事をどうかな?」

 「え…」

 「心配は、いらないよ」

 「でも…教授?」

 「何だ、何だ?」

 「…」

 「君?金が、ないのかな?」

 「…」

 「僕が、全額、出してあげるさ」

 「…」

 悪寒が、走った。




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