紗奈ノ巫女守人
はやひり
はじまり
私の巫女守人
歴史系の話はよく知らない。戦国時代のことも詳しくない。
だから、自分がそんな世界に入り込んでしまっても、現実味が無い。
でも、目の前で微笑む
「実は十年待った。五つで己の役目を聞き、産まれた時に握りしめていたという絵札を渡されてから」
そうして出会った時は、私と同じように夢見心地だったんだと。
◇◆◇◆◇◆
──歴史系の話を知らない私でも、何かで聞いたことはあった。
『動かざること山のごとし』
いつの時代の、どこの誰の言葉か知らないけど、意味は何となくわかる。悠然とそびえる山のように、その時が来るまで動くな、ってことかな。でも山は動かないから生まれた言葉だよね。その前提が、もし無かったら。
──山は動く。
山の神様が怒ると動き出す。
人々の怒りや憎しみ苦しみの固まり『邪気』が、山に集まるんだって。それに山神が怒って荒ぶり、土煙を巻き上げ岩を崩し木を押し流し、豊かな水源を枯らしてまでその地から離れたい……なんて思われたら、どうなると思う?
村が飲み込まれる。動物は逃げ出す。井戸は枯れ、川も消えたり形を変える。その山神が巨大であればあるほど、地形が大きく変わるんだ。
そしてあふれる『邪気』から真っ赤な物の怪をたくさんたくさん産み出して、人と
これらを『
この戦国時代のような世界では、人との戦、そして山追や物の怪。常に
それに山追い以外にも災害は起きる。なんとか危険を一つでも減らしたい。そのために『
ある理由で、札巫女が会話できるのはたった1人だけ。
他にも色々と縛りがあるけど──絵札を使い、山追を含む災害を予知できる。そして予知を元にみんなで事前に対処をする。
山追いにも対処できるの?
──それができるらしい。長い歴史の中で、対処法を生み出して、みんなたくましく生きてる。
そのためにも『札巫女』が必要だと言う。
違う世界から来た私には、いまいち『札巫女』の存在価値がわからない。だって、すごいのは物の怪を倒せる人達、ものごとを解決できる人達。予知だけでは何もできないよ。
でも、それが私に求められている仕事なら。領地の人々や、城のみんなのためになるなら。
私は絵札──タロットカードを使って、災害予知をしていく。
とは言え、人の言葉がわからない、文字も読めない。かなり寂しいし不便。
そんな中でも戦は起きるし、生きていくのは大変だ。
そして──想い人と結ばれるためには、なんて障害が多いんだろう。
そんな札巫女となった私は、今日も占術をはじめる。もうすぐこの部屋にやってくる私の『
きっとどんな障害も、一緒に越えていける。あの熱い眼差しをもつ、私の『巫女守人』と共に。
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