第11話 復讐×帰還


「俺……この世界に来てからずっと迷子になってないか?」


 動けるようになった俺は、出口を探して洞窟をさ迷っていた。


 血液は血液操作ブラッドコントロールですぐに操作出来るように、キーチェーンにして持ち歩くことにした。

 ここまでの道中、魔物を倒しながら進んできたがこの洞窟は魔物の巣窟らしい。


『グルルルルルゥ──』


 出口を目指す俺の前に、ブラッドウルフより小柄な狼の魔物が現れた。


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【ファングウルフ】Lv.18 / Dランク(exp:106)


【スキル】身体強化Lv.4,威圧Lv.1


【補足】体長1m程の狼の魔物。

 牙が大きく、動きが早い。

 3〜5匹の群れで行動している。


【料理捕捉】脂が少なく硬い。独特な獣臭がある。


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 有無を言わさず襲いかかってくるファングウルフ達に血刃けつじんで応戦する。

 スピードこそ早いが慣れればどうってことない。

 血刃はファングウルフの固い牙を諸共せず切り裂く。


「またか……」


 ファングウルフを倒していると、コモドドラゴンのような魔物が現れた。


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【ベノムリザード】Lv.20 / Dランク(exp:120)


【スキル】毒耐性Lv.3


【補足】体調1m程のトカゲの魔物。

 動きが遅い。全身を鱗状の皮膚で覆われている。

 顎下に毒腺があり、噛まれると毒素に感染する。

 ひと噛みで人間の大人を動けなくする程の毒を持ち、大量に摂取すると死に至る。


【料理捕捉】顎下の毒袋が破けると全身に毒が回る。

 肉はボソボソしているが、尻尾は硬タンパク質で柔らかい。


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 何処から嗅ぎつけて来るのか分からないが、俺が倒したファングウルフを咥えて持っていこうとする。

 しかも、コイツらが噛み付くと毒に感染して食料としても使えなくなってしまう。


 最初に見た時は、耐性スキルを持っていたこともあり積極的に倒していたが、ベノムリザードは放っておいても襲ってこないので基本放置することにした。

 ──倒したファングウルフを無駄にはされるが、味も美味くないしな……それより怖いのは、あの熊の魔物だ。


 いきなり後ろにいると怖いので、時々振り返るようにしている……完全にトラウマだ。


 ファングウルフは群れで行動することもあり、かなり効率よく経験値と食料を稼がせてもらった。

 今のステータスは──


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【名前/性別】クガ ユウヤ / 男


【レベル/Exp】Lv.17 / 2941(Next:99)


【スキル】短剣:Lv.2 / 料理:Lv.5 / 身体強化:Lv.3<0.4> / 威圧:Lv.1<0.8> / 縮地:Lv.1 / 火魔法:Lv.2<1.0> / 水魔法:Lv.2<0.4> / 風魔法:Lv.2<0.8> / 土魔法:Lv.2<0.2> / 生活魔法:Lv.- / 毒耐性:Lv.1<0.2>


【ユニーク(隠蔽)】転移者 / 鑑定 / 能力付与エンチャント / 血液操作ブラッドコントロール


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 ──っ!?

 ステータス画面を見ていると後ろに殺気を感じた。

 俺は前に回避しながら、後ろを確認する。

 そこには、左目を負傷・・・・・した熊が爪を振り下ろし、こちらを睨みつけていた。


 ──クソ、どこから現れた!?

 常に後ろは警戒していたが、直前まで足音も気配も感じられなかった。


 俺は血刃を構え、クマを睨み返す。


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【シャドウベアー】Lv.32 / Cランク(exp320)


【スキル】身体強化:Lv.5,威圧Lv.4

【固有スキル】ハイド


【捕捉】体長3m程の熊の魔物。

 巨体の割に動きが早く、鋭い爪と牙を持つ。


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 今まで遭遇した魔物の中では、1番レベルが高く固有スキルと言うものを持っていた。

 ──固有スキル? ハイドってなんだ?


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【固有スキル】

 特定の魔物が持つ特殊スキル。


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【ハイド】

 シャドウベアーの持つ固有スキル。

 自身の姿、気配を隠すことが出来る。


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 いきなり後ろに現れた理由は固有スキル『ハイド』の能力だったようだ。


『──グオォアァァァ!』


 俺が考察していると、痺れを切らした熊が雄叫びを上げた。大気がビリビリと震える。

 だが、俺は少し前に殺されかけた魔物を目の前にして格下にすら思えていた。


 シャドウベアーは四肢を巧みに使い距離を詰めると、前足の爪で切り裂いてきた。

 爪は俺に触れる事無く空を切り、鈍い音を立てて地面に落ちる・・・

 血刃で受け止めようとしたが、腕をそのまま切り落としてしまった。


『──グルゥオォアアアァ……』


 腕をなくしたシャドウベアは怒り狂ったように雄叫びを上げる。が、俺は縮地で距離を詰め、一気に首を刎ねた。

 シャドウベアーは力なく地面に倒れた。


「意外とあっけなかったな……さっさと解体して出口を探すか」


 シャドウベアーを解体し、インベントリに収納した俺は、出口を探して歩きはじめた。


 少し歩くと、見覚えのある別れ道にたどり着いた。


「ここで間違ってなかったら、今頃町でゆっくりしてたんだろうな……まぁ、もう終わったことか……」


 俺は呟きながら出口に向かって歩き始めた。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「──ッ! 眩しぃ……」


 久しぶりの太陽の光で目の奥がズキズキと痛む。

 太陽の位置を確認すると昼を過ぎたぐらいのようだ。


 カタクまでの道中で数人とすれ違ったが、みんなの視線が痛いほど俺に突き刺さる。

 それもそのはずだ、服は至る所が破け全身は魔物の血を浴びており、異臭も凄まじいことになっている。


「さすがにこれは笑えねぇよな……街に入る前に洗った方がいいな」


 俺は近くの木陰で生活魔法を使い、身体中を洗い流ししたあと、捨てずにインベントリに入れてあった宿屋のタオルで体を拭った。

 服はどうしようもないが、汚れと臭いは多少ましにはなったようだ。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


「止まれ! 身分証は持っているか!」


 門の前まで着いたところで門番に止められた。

 俺はギルドプレートを取り出し、門番に手渡した。

 門番はプレートを解析板に置いて情報を確認する。


「ウチの冒険者か……えらくボロボロだな、大丈夫か?」

「長旅だったもんで……」


 門番は俺を気遣ってくれたが、ずっと鼻を摘んでいた。

 俺は門番に頭を下げながら、街に入った。


 ──せめてインナーだけでもほしいな、風呂にも入りたい……

 街では確実に俺の見た目は浮いていた。道行く人達が皆、目を背ける。


 ──そう言えば大浴場は西門の近くにあるって言ってたよな……

 せめて風呂だけでもと思い、辺りに大浴場がないか探すと、1枚の看板が目に入った。


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      大浴場 

 大人:銀貨5枚 小人:銀貨2枚

 入浴セット:銀貨3枚で貸出有

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 ──入浴セットと合わせて銀貨8枚か……

 俺はインベントリからお金を取り出したが、銀貨3枚と銅貨4枚しか無かった。


「金が無さすぎて笑えねー……依頼の報告と素材の買取が先だな」


 俺は足早にギルドへ向かった。


∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞


  ギルドの扉を開けると、数人の冒険者がチラホラといた。冒険者達は変なものでも見るような目でこちらを見ている。

 受付カウンターを見ると、依頼内容を教えてくれた小柄な受付嬢の窓口が空いていたので、受付に向かった。


「遅くなったけど、何とか戻ってこれたよ……」


 俺は、苦笑いしながら話しかけたが、受付嬢は浮かない表情で書類作業を行っている。

 ──かなり気分が落ちているみたいだな……


「大丈夫か? 何かあったのか?」

「いえ、大丈夫です。ちゃんと仕事しますね……依頼の完了報告ならギルドプレートと依頼書の提示をお願いします……討伐依頼でしたら討伐対象の部位も提示してください……」


 こちらに目も向けず、俯きながらボソボソと言われた。

 俺は、言われた通りにギルドプレートを提示する。


「エレメンタルの討伐は外殻を渡せばいいのか? 確か外殻1個で銀貨5枚だったよな?」


「はい。エレメンタルの討伐ですね……エレメンタル!?」


 受付嬢は勢いよくこちらを向くと、カウンターに身を乗り出してきた。


「っ!? どうした!?」

「ユウヤさんっ!……い、生きて帰ってぎでぐれだんでずね……よがっだよーー」


 受付嬢が泣きながら笑っている……

 折角の可愛らしい顔が台無しになっているが、大丈夫だろうか。


「なに!? え、ちょ、ちょっと泣かないでくれ……」


 ほかの冒険者たちの視線が俺に突き刺さる。


「ヒナ! また、あなたは……ってユウヤさん!? 無事だったんですね!」

「え? あぁ、うん」


 俺が慌てていると、騒ぎを聞きつけたのか奥の部屋からエルさんが出てきた。


「マスターを呼んで来ますので、応接室でお待ちいただけますか?」

「え? マスター?」

 ──マスターってあの爺さんのことだよな? 話ってなんだ……?


「ヒナ、あなたがユウヤさんを応接室まで案内しなさい」

「はい! ヒグッ……ユウヤさん、こちらへどうぞ」


 俺はヒナと呼ばれる受付嬢に連れられて、応接室に向かった。

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