第2話 仏の顔も三度まで

 一年後。


 ――勇者と魔王の戦いも終盤。


「一年待て。鍛え直し、再度お主の前に立ちはだかろう」


「三回目だぞ、そのセリフ。仏の顔も三度まで。最後に言い残すことはあるか?」


「まっ、待つのじゃ。ちょっと、ちょっとだけでいい。妾の話を聞いてくれたもれ」


「言ってみろ」


「妾は魔界最強じゃ。魔界には妾に匹敵する者はおらん。だから、修行相手がおらんのじゃ」


「よし、さらばだ、魔王よ」


「待って、待って、待って。やめて、剣構えないでっ! ちゃんと最後まで聞いてくれたもれ」


「仕方ない。後少しだけつき合ってやる」


「魔界には修行相手がいない。妾の修行相手になれるのは勇者よ、お主くらいしかおらんのじゃ」


「それで?」


「だから、お願いじゃ。どうか、妾の修行相手になってくれたもれ。そうすれば間違いなく妾は強くなれる」


「はあ? 魔王の修行相手する勇者がどこにいる?」


「妾の目の前におるぞ?」


「……。おまえ、バカか? ポンコツか?」


「なあ、一緒に修行すれば、妾もお主もさらに強くなれる。それに一緒に修行すると楽しいぞ」


「やっぱり、ポンコツだな」


「ポンコツ言うな〜」


「俺は一人でも強くなれる。おまえもどうしたら強くなれるかちゃんと考えろ」


「おっ、剣を仕舞ったという事は……」


「また、来年だ。そのときまでに強くなっておけ」

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