第271話 3位と4位に輝いたのは……


 いよいよ四組の中から今年の優勝者が発表されるということもあって、会場の熱気は最高潮に達していた。


 そして司会の女性はその盛り上がりに乗じるように声を発した。


「さぁ~、皆様お待ちかね……今年の聖夜祭の結果発表を行います!!まずは第4位の発表です!!」


 そう言って司会の女性がパチンと指を弾くと、会場の照明が舞台に並んだ四組をランダムに照らしていく。そして……。


「第4位はエンラさんソニアさんペアです!!」


 司会の女性のその言葉と共に会場の照明は一斉にエンラとソニアの二人を照らし出した。


「あちゃー……4位ねぇ。」


「申し訳ありませんエンラ様……。」


 少し残念そうにするエンラに力不足を感じたのか、ソニアは平謝りしているが……そんな彼女の頭にエンラは手を置いて優しく言った。


「あなたが謝る必要なんてないわソニア。4位に入っただけ良いと思いましょ?」


「エンラ様ぁ……。」


「お二人はこの中では惜しくも最初に発表されてしまいましたが、下の追随を許さないほど巨大な宝石を手にいれていました!!それがこちらです!!」


 そして舞台上に運ばれてきたクロスのかけられた台。そのクロスを司会の女性が勢いよく剥ぎ取ると、その中からなんとも大きく美しいルビーレッドのカーバンクルの宝石が現れた。


「因みにこちらの宝石は、昨年の聖夜祭にてクリスタさんが獲得した宝石よりも大きいものになります!!それだけ今年の聖夜祭はレベルが高いのです!!」


「ふぅ~ん?なら上々ね。色も好みだし、悪い気分じゃないわ。」


 エンラが宝石を手に取り眺めていると、司会の女性が何やら賞品を持ってきた。


「4位に輝いたお二人にはこちらの賞品をお送りします!!」


 そして二人に手渡されたのはお揃いの色の宝石が埋め込まれたネックレスだった。


「あらあら洒落てるわね。しかも二人分。」


「こちらはお二人が獲得したカーバンクルの宝石をプロの職人の手によって加工したネックレスとなります!!」


 エンラはそれを受けとると、片方のネックレスをソニアの首にかけた。


「エンラ様、いいんですか?」


「当たり前でしょ?二つあるんだから。あなたも着けなさい。これは命令よ?」


「うぅ~……ありがとうございますエンラ様ぁ。」


「こらこら、泣かないの。ワタシ達にはまだまだ時間があるんだから、来年……再来年って挑めば良いじゃない?ちょうど身を守ってくれる騎士もいることだし……ねっ?」


 そう口にしながら、エンラはチラリと大勢の観客の中から俺のことを探しだすと、視線を向けてきた。


「それでは皆様!!お二人に今一度大きな拍手をお願いします!!」


 司会の女性のその言葉と共に再び大きな歓声と拍手が二人に送られた。


「それでは第3位の発表に移りましょう!!大激戦の中、3位にランクインしたのは~……。」


 再び会場の照明が動きだし、クリスタとラピス、アルマ様達を照らし出す。


 そして照明はピタリとラピスの立っている場所で動きを止めた。それと同時に司会の女性が声を張り上げた。


「第3位に輝いたのは、今年最多宝石賞を獲得したラピスさんです!!」


「おぉ、我か。」


「「「きゅ~っ!!」」」


 ラピスが驚きの声をあげると同時に、彼女の背後から沢山のカーバンクルが姿を現した。


「おおっと!!なんということでしょうか、ラピスさんを祝うように沢山のカーバンクル達が現れました!!」


 ラピスを祝うように現れたカーバンクル達は、司会の女性から渡すはずだった賞品とラピスが獲得した一番大きな宝石を預かると、彼女の前に運び、まずは宝石の方を直接ラピスへと手渡した。


「おぉ、ありがとの。」


「ラピスさんはエンラさんペアよりも直径が2cm大きな宝石を獲得しました!!そして、3位に輝いた賞品……及び最多宝石賞の賞品はこちらです!!」


 司会の女性の言葉と同時に、カーバンクル達はラピスの人差し指に大きな藍色の宝石がはめ込まれた指輪を通し、髪には数多の色とりどりの宝石が埋め込まれたヘアクリップを飾った。


「最多宝石賞の賞品はカーバンクルの宝石をふんだんに散りばめたヘアクリップです!!そして、3位の賞品は指輪になります!!」


「ふむふむ、加工されない状態の宝石も美しかったが……職人の手によって加工され、さらに美しさを引き立たせたこの装飾品も良いものだな。」


 カーバンクルに祝われているラピスへと俺が拍手を送っていると、肩に乗っていたピンク色のカーバンクルも満足げに拍手を送っていた。


「きゅ~っ!!」


 そして肩の上のカーバンクルが一つ鳴き声をあげると、会場の歓声の中に紛れていたにもかかわらず、ラピスの周りにいたカーバンクル達は気が付き、此方へと手を振ってきた。


「む、あそこにいるのはカオルか。」


 それによってラピスもこちらに気が付くと、指を3本立てて、3位ということをアピールしながらこちらに笑顔を向けてきた。

 優勝には少し届かなかったが……カーバンクルと絆も築けたようだし、なんだかんだ嬉しそうだな。


 さて、残すはアルマ様達とクリスタか。どちらが栄光の1位の座を獲得するのか……。楽しみだな。


 残すは1位と2位のみとなった結果発表に、会場の熱気はオーバーヒートしていく。

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