第255話 キメラ討伐
産み出されたキメラは4体の魔物を配合して造られたもの。故に歪な姿になっている。
形容しがたい形状となったキメラへと、リルは上着の内側へと仕込んでいた苦無を投げた。
その苦無はキメラの体にサクッと刺さるが、キメラは何事もなかったかのように動いている。その様子にリルは少し顔をしかめた。
「大型の魔物でも、掠めるだけで動けなくなる麻痺毒なんだけどなぁ~。」
リルの上着の内側に張り付けてある苦無には彼女自らが調合した特製の超強力な麻痺毒が塗り込んである。しかしそれを受けて尚……キメラは動き続けていた。
「どうやら毒に耐性のある魔物が素材に使われているようですね。」
セブンはそう分析すると、槍を片手に一歩前に出た。そんな彼女へとキメラは魔法を展開し、そこから無数の火の玉を打ち出した。
しかし、そんなものでセブンが止まるはずもなく、彼女はあっさりと自分へと向かってくる火の玉を打ち落とすと機械の翼に赤い光を灯した。
「生憎……マスター以外の者に渡す
赤い光を灯した翼を一つ羽ばたかせると、セブンはキメラへと急接近し、一瞬で懐へと入り込んだ。
「疾風……。」
その言葉と同時に常人ではとらえられない速度でセブンは動きまわり、キメラの体を細切れにしていく、そして肉片が未だ宙を待っている最中彼女は槍の先端をそのキメラの肉片へと向けて言い放った。
「迅雷。」
その言葉とともに放たれたのは、眩い雷……。それは一瞬でキメラの肉片を一つ残らず灰塵と化し、その威力の高さを見せつけた。
そしてあっさりとセブンによって消滅してしまったキメラを監視していたリカルドは狼狽えながら声を上げた。
「馬鹿な……私の最高傑作をいとも簡単にッ!?」
「さて、別室にてこちらの様子を覗いているようですが……その位置も把握しました。」
「なにっ!?」
そう口にするとセブンが翼に赤い光を灯したまま、槍の先端を壁の方へと向ける。
「照射。」
その言葉と同時に放たれたのは真っ赤なレーザー光線。それは何重にも重ねられた壁を容易く貫通し、別室で悠々と観戦していたリカルドの居場所まで一直線に道を繋いだ。
「ひぃっ!!ば、化け物……。」
「化け物を産み出してたのはあんたでしょう……がっ!!」
「ブえっ!?」
セブンが作り出した通路を通ってリルはリカルドの顔面に怒りの鉄拳をめり込ませた。それによってリカルドは一瞬で意識を刈り取られぐったりと倒れ込む。
「死ねっ!!」
そしてキメラを産み出していた張本人を目の前にして怒りで我を忘れたリルは容赦なく気絶しているリカルドに苦無でとどめを刺そうとするが、その手をセブンが止めた。
「なんで止めるのさっ!?」
「マスターからの命令ですので。」
「~~~っ、こいつはっ!!平和に暮らしてた人達の人生を弄ぶかのように奪った極悪人なんだよ!?この手で殺してやらなきゃ……死んでしまった人たちが報われないじゃん!!」
そう感情に任せて言葉を発したリルに、落ち着いてセブンは告げた。
「リルさん。あなたのその怒りはごもっともです。ですがここで殺してしまっては……元も子もないかと思われます。」
「……どういうこと?」
「このリカルドという一人の人間の一生を掛けて罪を償わせた方が良いとは思いませんか?確かに殺してしまうという手段も罪を償わせる一つの方法であるとは思いますが、死ぬ時というのは一瞬です。果たしてそのたった一瞬の苦しみで、死んでしまった人たち全員分の罪が清算されるのでしょうか?」
「…………そう……だね。私が間違ってた。」
ポツリとそう呟くとリルは苦無を自分の上着の中へと戻した。
「こいつには一生を掛けて罪を償ってもらう、苦しんで……苦しみ抜いて一生を終わらせなきゃ……ね。」
「わかって頂けたようでなによりです。」
そしてセブンがリルの説得に成功したその時だった……。
「非常事態発生カラ一定ノ時間ガ経過シマシタ。コレヨリ当研究施設は爆破シークエンス二移行シマス。生存シテイル職員ハ直チ二避難ヲ開始シテクダサイ。」
機械音声がそう部屋中に響き渡ると、部屋の中にあるモニター全てに3分という数字が表示されどんどん刻まれていく。
「うわ……爆破だってさ。ホント用意周到だね。」
「無駄話をしている暇はありません。リルさん、直ちにこの場を脱出しましょう。」
「うん、そうだね!!」
そしてリルとセブンは爆破までのタイムリミットが3分しかない研究施設から施設の職員たちを連れて脱出を試みるのだった。
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