第245話 セブンの能力


 長い、長いセブンの接吻からようやく俺は開放されると、彼女は俺の記憶を読み取り自分がパラシミアに操られていたことを認知し、謝罪の言葉を述べてきた。


「……マスター、この度はご迷惑をお掛けしてしまったようで申し訳ありません。」


「問題ないさ、それより……パラシミアに操られる前の記憶とかってないのか?」


「セブンがダンジョンで目覚めた時の記憶は少しだけあります。マスターの記憶にあったパラシミアという人物は、大人数でダンジョンへと挑んできた末……セブンのことを不明なスキルで支配しました。それ以降の記憶はありません。」


「ふむ……大人数でダンジョンに挑んできたか。」


 もしかすると、そのダンジョンに一緒に入った人達が……エルフを再び襲撃したのかもしれない。


 そう考察していると、ナインが言った。


「マスター、ナインとスリーが解析を進めた結果……一時的にセブンの身体を操っていたあのスキルはを操るスキルかと思われます。」


「菌糸?それってキノコとかが生えてくる……あの菌糸か?」


「はい。あくまでも推測の範囲に過ぎませんが、過去に酷似したスキルを持った人物がいたという情報データが残っていました。」


「もし、そのスキルをナイン達が見たら……そのなんだっけ?コード9999だっけ、それには該当するのか?」


「しません。他者に寄生させ操るというスキルは確かに強力です。ですが、終末で役立つスキルとは思えませんから。」


「なるほどな。」


 そういえばナイン達が造られた目的ってのは終末ってやつに備えるため……だったな。ナイン達もその終末ってやつがなんなのかはわからないらしいが。


「しかし、セブン……あなたが寄生されて操られるとは、あのパラシミアという男はそれほどの実力者だったのですか?」


 ナインはセブンに問いかける。すると、セブンはふるふると首を横に振った。


「いいえ、パラシミア自身の戦闘能力はほぼありません。セブンは寄生させられた人間達に命懸けで拘束された末、あれを植え付けられたのです。」


「そのダンジョンを探索しに来てた人達も操られてたってことか。ってことは、最初からセブンを操るのが目的だった……のか?ただのダンジョン探索ならわざわざ洗脳した人達を向かわせる理由はないし。」


「恐らくは……。」


「そうなると、俺以外にもナイン達アンドロイドのことを知ってるヤツがいるって考えて良さそうだな。」


「はい、どうやって存在を知ったのかは謎ですが……。そう考えるのが自然かと。」


「うーん、ナイン達は一人でも敵にいたら厄介な存在だからなぁ。そうなると、できるだけこっちが先にアンドロイドが眠ってるダンジョンの情報を集めないと。」


「それでしたらセブンが適任かと。」


 セブンが自分の胸に手を置いて言った。


「セブンのこの翼には高度なソナーがついています。未開拓のダンジョンの正確な場所を探し当てる他、未だ起動していない人造人間アンドロイドの反応を探ることも可能です。」


「おぉ~、その翼には飛ぶだけじゃなくそんな効果までついてるのか。」


 本当にアンドロイドは一人一人様々な能力を持ってるな。


「それじゃあ今眠ってるアンドロイドの反応を探し当てられるか?」


「可能ですが……スリーのアクセス権限を使っても恐らく開かないダンジョンかと思われます。」


「つまり、ミラ博士が意図的に隠してるダンジョンってことか?」


「そういうことになりますね。」


 ふむぅ……物事そう上手くは運ばないな。しっかし、何でまたミラ博士は探してほしいって言っておきながらアンドロイドが眠ってるダンジョンを隠すかねぇ。なにかしら目的があるんだろうが……理解できないな。


「さてさて、どうするかな。」


 今後について頭を悩ませていると、ナインが告げた。


「マスター、敵がナイン達の存在を知っていて、尚且つ使役を目的としているのは明らかです。ですが、ナイン達のそれぞれの能力を合わせれば、敵を出し抜くことは可能かと。」


「確かに……な。」


 これからはアルマ様の食材集めと平行して、アンドロイドが眠るダンジョンの攻略もしてかなきゃいけないな。


「忙しくなるなぁ。」


 まだアルマ様から次の食材の要望は来ていないが、それも時間の問題だ。ヒュマノの動きも気になるし、ぺルの動きも不穏だ。


 兎に角今はクリスタがあのパラシミアから他の情報を引っこぬいて来てくれるのを待つしかなさそうだな。


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