第211話 優勝賞品
ジンとの闘いに勝利し、ラピスのもとへと戻ると彼女は満足そうな笑みを浮かべて俺のことを待っていた。
「流石はカオルだの。エルデの従者ですら相手には不足か?」
「そんなことないさ、充分強かった。」
やっぱり大地を身に付けられると闘いにくい。それに魔力爆発ってスキルがあったからこそ、ジンの硬い表皮を貫通してダメージを与えられたんだ。それがなかったら対抗策は無かったかもしれない。
「で?なんかエルデは賞品があるとか言ってたけど、それはどこでもらうんだ?」
「先程会合をした場所だ。優勝賞品は我ら以外には秘密なのだ。」
「ほぉ~……。」
「此度は何がもらえるかのぉ~。我は食い物がよいが……貴重な光り物も悪くない。」
「ちなみに前回はなんだったんだ?」
「前回か?前回は確か……ステータスの果実三種だったな。」
なかなか貴重なものを貰えるみたいだな。これは期待が膨らむ。
ラピスとそんな会話をしていると、俺達の足元に魔法陣が現れた。
「どうやらエルデが送ってくれるらしいの。」
「そいつは楽で助かるな。」
そして魔法陣から光が溢れてくると、次の瞬間には俺とラピスはつい先程まで五老龍達が会合していた場所へと戻ってきていた。その場には他の五老龍の面々とその従者達も揃っていた。
全員がいることを確認したエルデが口を開く。
「さて、では此度の龍闘祭優勝のラピスの従者には……此方からこれを贈ろう。」
そう言ってエルデが俺に手渡してきたのは、日本でたまに目にしたドラゴンフルーツをもっとゴツくした感じの見た目をした果物らしきものだった。
「これは?」
「それは此方ら龍の力を大きく高める……と言い伝えられている龍昇華と呼ばれる花の果実だ。」
「「「「龍昇華!?」」」」
エルデがそう説明した時、ラピスを含む他の五老龍の面々が驚いた声をあげる。
「そ、それって1000年に一つしか実をつけないって言われてるやつじゃないの!?」
「うむ。そうだ。」
「簡単に頷くわね!?」
エンラがエルデに問いかけると、いとも当然といった様子でエルデは頷く。
どうやらエルデが渡してきたこの果実はとんでもなく貴重なものらしい。
「そんな貴重なものをもらっても良いんですか?」
「うむ、構わん。此方はその果実が本当に龍としての力を高めるのか気になっているのだ。」
「その言い方だと、食べたこと無い……って風にきこえるんですけど?」
「1000年に一度実をつけると言われている果実だ。此方ら五老龍ですら口にしたものはいない。……なぁ?」
エルデが他の五老龍達に問いかけると皆一様に頷いた。
「えぇ!?」
「仮にもし本当に龍としての力を大きく高めるものだとしたら、此方ら五老龍の誰かが食べたとしたら力の均衡が大きく崩れてしまう可能性がある。故に此度の龍闘祭の賞品として、その従者に食べてもらい効果のほどをこの目で確かめたかった。」
エルデはこの果実を賞品とした理由を淡々と述べる。確かに彼の言っていることは間違ってはいないだろうし……均衡というものを危ぶんでいるのもわかる。
だが、本当に効果があるのかわからないものを賞品にするかなぁ……。甚だ疑問だ。毒だったらどうするのだろうか。
まぁ仮にもしこいつが毒のある果実だとすれば、俺の危険予知が発動してくれる……はずだ。まぁなんとかなるだろう。
「これは……今食べた方がいいですか?」
「うむ、効果をみたいのでな。ぜひともそうしてくれ。」
チラリとラピスの方を向くと、彼女は少し残念そうにしながらもコクリと頷く。それを確認した俺は龍昇華の果実とやらにそのまま噛りついた。
すると、口いっぱいに甘酸っぱい果汁が溢れだす。果肉の食感はシャキシャキ……というかサクサク?と表現した方が正しいかな。少し変わった食感だ。
それを飲み下すと、頭のなかに声が響く。
『龍昇華の果実の摂取を確認しました。』
(おっ?これは何かが始まるな。)
と、思っていると再び声が響く。
『しかし、摂取した当人が龍種ではないためステータス上昇効果のみステータスに反映します。』
そして声が聞こえなくなったところでステータス画面を開いてみると、確かにいろいろなステータスが大きく上昇しているのが確認できた。
それを眺めていると、エルデが問いかけてきた。
「どうだ?何か効果はあったか?」
「ステータスは上昇したみたいですね。でもそれ以外には特に変化はないみたいです。」
「む……そうか。伝承では龍の進化を促すとかなんとかなんとか書いてあったが、眉唾物だったか。」
そう残念そうに呟くエルデ。
しかし俺はこの時ステータスの数値のみに目を当てていたから気が付かなかったが、俺のステータスの種族のところが日本人から日本人(?)へと変化していた。
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