第189話 霊薬の力
メアの目的の霊薬をクリスタからもらった俺達は彼女にお礼を言ってエルフ達の集落を後にしようとした。
その時、見送りに来ていたクリスタにあるものを手渡される。
「カオルさん、帰る前にこれを。」
そう言って彼女が手渡してきたのは首から下げるペンダントのようなものだった。手のひらサイズの丸い円形の装飾には何やら紋様が彫ってある。
「これは?」
「わたくしがこの集落に入ることを認めた者に渡すペンダントです。一度魔力を流して見てください。」
彼女に言われるがまま、俺はペンダントに魔力を注いでみると、ペンダントに刻まれた紋様が青く光り輝いた。
「これで貴方の魔力にしか反応しない唯一無二の通行証の出来上がりです。」
「でも、いいんですか?こんなものもらって……。」
人間の俺がここに出入りするのはここに住んでいるエルフ達があまり良い気分にならないと思うのだが……。
そう心配に思っていると、またしても俺の心の内を読んだように彼女は言った。
「そのペンダントはエルフ達の長であるわたくしが認めた証。それを首から下げていれば、他のエルフ達も貴方のことを認めるでしょう。それだけ信頼性のあるものなのですよ。」
「そうなんですね……じゃあ、ありがたくもらっておきます。」
「フフフ、貴方の存在はきっと……エルフ達に良い影響を与えることになるでしょうから。気軽に訪ねてきてくださいね?」
「ありがとうございます。それじゃ、メア……頼む。」
「うん、パパ。クリスタまたね?」
「えぇ、また近々お会いしましょう。」
そして俺とメアは移動魔法で魔王城へと戻ってきた。
すると、早速メアは件の世界樹の霊薬を口にしようとする。
「早速飲む。」
「本当に大丈夫なのかそれ?」
「大丈夫。本能でわかる。」
俺の心配を他所にメアは小瓶の中に入っていた赤い液体を一気に口に含んだ……。すると、みるみるうちに彼女の表情が苦虫を噛み潰したような表情へと変わっていく。
どうやら、霊
しかし、なんとかゴクリと飲み干したメアの体にすぐに変化が現れ始めた。
「お?」
メアの身長がまるで木が上へ上へと伸びるように伸びていき、前まで俺のお腹ぐらいまでしかなかった身長が一気に俺の胸の辺りまで伸びたのだ。
それに伴ってやはり女の子としていろいろな部分が成長している。それと、特徴的だった額に生えた角も太く、長くなり、腰に生えていた羽と尻尾もかなり成長した。
「おぉ~、凄いな。あの薬を飲むだけでそんなに成長できるものなのか。」
ってことは俺が飲んだら……老化まっしぐらだな。
そして成長を終えたメアは自分の体を眺めてニヤリと笑う。
「ふふ……カナンには勝ってる。多分アルマにも負けてない。」
どこに勝ち負けがあるのかは不明だが……まぁ兎に角満足そうで何よりだ。
「パパ、見て!!メアも大きくなった!!」
「あぁ、そうだな……。それじゃあ今日から
「え゛っ?」
「カナンも大きくなって一人部屋になったんだ、メアも大きくなったし……そろそろ一人部屋が欲しいだろ?」
「大きくなったら一人で寝なきゃダメ?」
表情を青くしながらメアは問いかけてくる。
「まぁ、メアも女の子だしな……。寂しかったらカナンに頼んで一緒に寝たらどうだ?」
カナンならきっと受け入れてくれるだろう。
俺がそう告げると、メアはガックリと膝を着いた。
「失敗した……。パパと一緒に寝られなくなることは考えてなかった。」
「大袈裟だな、俺はいつだってここにいるんだぞ?」
「大きくなった代わりに、失ったものが大きいの……。今度またクリスタに相談決定。」
結局、その日からメアはカナンと一緒の部屋で過ごすことになり、俺は久し振りに一人でベッドの上に寝転んだ。
「ん~!!」
今日からは、体を大の字にして寝転がっても誰にも迷惑をかけることはない。
「流石にあそこまで女性的に成長したカナンとかメアと一緒に寝るってなったら……俺の方が持たないからな。」
まぁ今までも左右に女の子がいるというだけで、結構ドキドキしながら寝ていたのは事実だが……。
「さて、そろそろ寝るか……。」
今日は落ち着いて寝られそうだ。
そして俺は目を閉じてゆっくりと微睡みの中へと落ちていくのだった。
その時俺はクリスタにもらったペンダントを外すのを忘れていたことに気が付かなかった。
暗い部屋の中で首から下げていたペンダントの紋様は月明かりに照らされて青く光っていた……。
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