第178話 ダイミョウウオを求めて


 それから数日たったある日、俺はカナンと二人で城下町から南の方にある。海街へとやってきていた。ここがダイミョウウオの生息している海域らしいのだ。


「やっぱり海街は活気が違うな。」


「そうですね、魔王城の城下町とはまた違ってすごいみんな元気なのが伝わってきます。」


 街が変われば人の活気も変わる。特にこういう海街に住んでる人たちというのは活気にあふれていて、とても元気な印象がある。

 それはこっちの世界でも日本でも変わりはないようだ。


「そういえば、今回ってアルマちゃんの成長に必要な食材を取りに行くんですよね?」


「あぁ。」


「なんでアルマちゃんついてこなかったんですかね?いつもならいっしょに行くって言いそうなんですけど。」


 今回、カナンを一緒に連れていくとアルマ様に告げてからやってきたのだが、カナンの言う通り着いて行きたい……とは言わずただとだけ言って送り出してくれた。


「さぁな。他人の心を読む力は俺にはないからわからないな。」


「ボクの聞いた話だとこの世界にはそういうスキルもあるみたいですよ?」


「マジか。そこまで来たらなんでもありだな。」


 でも人の心を読むスキルが扱えたらいろいろ便利そうだな。……と思ったが他人の心を読めたら嫌なことまで知ってしまいそうだ。周りにいる人が心の奥で何を考えてるのかわかってしまうということだからな。それが例えば自分に対する陰口とか、そういうのが全部聞こえてしまったら……逆にこっちの心が壊れてしまいそうだ。

 そういうスキルは心が頑丈な人じゃないと会得しても意味を成さないかもしれない。


「それでこれからはどうするんですか?」


「船を借りて、ダイミョウウオが生息してるっていう海域に向かう。できれば明るいうちに済ませたい。」


 夜になって暗い海の中では見えるものも見えない可能性がある。俺には夜目というスキルがあるが、カナンにはそういう類いのスキルはないらしいからな。


「夕暮れまではまだ時間がある。早く行こう。」


 そして俺とカナンは漁港へと向かう。船を貸し出している店を見つけて中に入った俺たちは早速店主にダイミョウウオがいる海域まで行ける船を借りたいと切り出した。


「お兄さんたちダイミョウウオを倒しに行くのかい?」


「はい。」


「あいつらは普通の船なら簡単にバッサリ切り裂いちまう。だから貸し出すとしたら高い船になるが……それでも構わないかい?」


「大丈夫です。」


 俺は白金貨を一枚店主に渡す。すると彼は鍵を手渡してくれた。


「まぁ無事に船を返してくれたら、貸出料金の七割は返金する仕組みだからとにかく気をつけてな。これが船のキーだ。」


 船のキーを受け取った俺はお礼を告げてカナンとともに店を出た。


「え~……214番の船かどこだ?」


「たくさん船があってわかんないですね。」


 漁港に泊められている船はかなりの数があり、その中からこの214番の船を探すというだけでもなかなか難しい。だが、店主の話を聞いていた限り普通の船ではないようだから……何かしら特徴があると思うんだがな。


 そして漁港を探し回ること数分後……カナンが声を上げた。


「あ、カオルさんあれっ!!」


 カナンが指差した先には船の横に214と番号が書いてある船が停泊していた。明らかにほかの船よりも頑丈そうで大きい。


「あれか、良く見つけたなカナン。」


 その船に近づき、飛び乗って操縦席へと向かうと何やら俺の知っている船とは違うものが置いてある。丸い円盤の中に辺りの海図が映っている。そこには他の船の反応や、魚の反応までも映っている。これを操作するのか?


「特にハンドルみたいなものはないし、こいつで船を操作するみたいだな。」


 その円盤に手を近づけると、文字が浮かび上がってきた。


『目標地点を設定してください。』


「目標地点……目標地点は~っと。」


 俺はダイミョウウオについて調べたメモを取り出してヤツがいるという海域と同じ座標を円盤の上に表示されている海図にピンをさした。すると再び文字が浮かび上がる。


『目標地点の座標を確認しました。自動操縦を開始します。』


 そう文字が浮かび上がると、ゆっくりと船が動き始めた。


「わわっ!!動いた!!」


 ゆっくりと動き出した船に驚くカナン。


「これでダイミョウウオ?でしたっけ、その魔物がいる場所まで行けるんですか?」


「そうみたいだな。その場所まで自動操縦で行ってくれるらしい。そこに着くまでは少し時間がかかるみたいだから船内でゆっくりしてよう。」


「海の景色を眺めててもいいですか?」


「構わないけどあんまり海面を見すぎないようにな?船酔いするぞ。」


「気をつけます!!」


 さて、自動運転してくれてるみたいだし俺は少しゆっくりするか。

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