第170話 深まる謎
俺の身長ほどもあるのではないかという長さまで刀身が伸びたアーティファクトの柄を両手で掴み、俺は6本腕の魔物へと向かって構える。
正直な話、剣道とかを習っていたわけではないからどんな構えが正解なのかわからないが、ひとまずすぐに剣を振り抜ける構えなら問題ないだろう。
「防げるものなら防いでみろ。」
そう言って天井スレスレの位置までアーティファクトを振り上げた俺は、そこから一気に6本腕の魔物へと向かって振り下ろした。
すると当然のように、上から振り下ろされるアーティファクトを受け止めるべく、ヤツは手にしていた武器を構えた。が、ヤツが構えた武器はまるで意味をなさないかのように俺のアーティファクトによって斬られていく。
「……!!」
ヤツは2本の腕の武器で受け止められると思っていたのだろう。握っていた武器が斬られると一瞬驚いた表情を浮かべながらも、驚異の反射神経で反撃に転じようとしていたもう2本の腕の武器で眼前に迫ってくる俺のアーティファクトを受け止めようとする。
しかし、膨大な魔力を籠めた俺のアーティファクトはその程度では止まらない。何の意味もないと見せつけるように、ヤツの防御に回した武器をすっぱりと切り裂いて、最後にはヤツの体をも真っ二つにしてしまう。
そしてヤツの体を真っ二つにして役目を終えたアーティファクトは元のナイフほどの大きさに戻ってしまった。
「ふぅ、一丁上がりだな。」
そう一つ息を吐き出したその瞬間、俺はある異変に気が付いた。
「ん?」
真っ二つにされ絶命した6本腕の魔物は、ダンジョンという場所の性質に従って青い光になったのだが……その光が俺に吸収されず、手にしていたアーティファクトに吸収されていっているのだ。
「あれ?なんでだ?」
思わぬ現象に首をかしげていると、スリーがこちらに向かって歩み寄ってきた。
「そのアーティファクト……確かミラ博士の製造したアーティファクトリストにはない物でしたよね?」
「あぁ、ナインがそう言ってたな。」
「…………。マスター、そのアーティファクト少々お借りしてもよろしいですか?」
「全然いいぞ。」
そして俺はナイフのアーティファクトをスリーに手渡した。すると彼女はそれを見つめて分析を始めたようでピクリとも動かなくなってしまう。それから数分後、解析が終わったのかスリーはこちらにアーティファクトを渡してくると、驚きの一言を告げた。
「マスター、このアーティファクトから微弱ですが生体反応を検知しました。」
「は!?生体反応だって!?」
「はい。」
思わず驚く俺だったが、同時にちょっと前にカーラにこのアーティファクトを見せに行ったときのことを思い出す。
『単なるアーティファクトみたいな道具じゃなくて、これ自体にまるで
と、彼女はこれを見たときに言っていた。あの時の彼女は確証はないと言った感じで言っていたが、今のスリーの言葉を聞いた後で思いかえすと、的を射ていたことがわかる。
「……つまり微弱でも生体反応があるから、こいつで魔物にとどめをさしたらこれに経験値が吸われるってことか。」
「おそらくはそういう仕組みで間違いないかと思います。」
「ふむ……。」
最初に拾った時から思っていたがつくづく不思議な物体だなこれは。こいつ自体に生体反応があるってことはレベルっていう概念も存在するのか?もし存在するなら、こいつのレベルが上がっていったらどうなるんだろうな?使ってる俺に反抗してきたりするのかな?だとしたらもう使いたくはないんだが……考えすぎかな。
「使い勝手はいいんだけどなぁ……経験値が吸われるってなるとちょっと使うのに渋るな。」
ポツリとそうつぶやいた途端、一瞬手の中でビクンとアーティファクトがはねたような感じがした。それと同時にアーティファクトに吸われていた青い光が突然俺に吸収され始める。
「んん!?なんなんだ!?」
ますます訳が分からない。経験値を吸ったり、はたまた今度は手のひらを返したように俺に経験値が入ってきたり……。やっぱり謎が多すぎるぞこのアーティファクト。
「スリー。」
「はいマスター。」
「後でこのアーティファクトよ~く調べといてくれないか?」
「かしこまりました。ですがマスターもご存じの通りミラ博士のアーティファクトリストにない物ですので、多少時間がかかると思いますがよろしいですか?」
「全然かまわない。」
「では後程時間をかけて解析しておきます。」
そして先に進もうとした俺たちだったが、不意に後ろからスリーに呼び止められた。
「それとは別なお話ですが、マスター。」
「ん?」
「先ほど剣を構えていらっしゃいましたが、全く型にはまっておりませんでした。明日からは剣術の訓練も取り入れましょう。」
「あ、は、はい……。」
アーティファクトの謎は深まるばかりだし、明日からの俺の戦闘訓練はもっともっとハードになりそうだ。
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