第168話 必殺の一手


 両手に魔装で剣を作り出した俺は、クリスタルリザードへと向かって一直線に向かっていく。


 もちろん、向かってくる俺になにもしないということはあり得ない。俺の頭上からヤツの剣のような尻尾が振り下ろされる。


「いよっ!!」


 真正面で打ち合っては俺の魔装の方が負ける。それをわかっていた俺は、剣と剣がぶつかった瞬間に、剣の角度を変えて受け流すようにクリスタルリザードの剣の振り下ろされる方向を逸らした。


 そして俺の真横に突き刺さるクリスタルリザードの尻尾。しかし、先程同様に地面に突き刺さりながらもこちらに向かって地面を切り裂きながら迫ってくる。

 その攻撃も躱して一気に詰め寄るとヤツはまだ余裕の笑みを浮かべていた。その余裕の笑みが、俺の本当の攻撃に気が付いたときどんな表情に変わるかな?


 俺は両手を合掌し両腕に纏わせていた魔装を一つに合わせてヤツの目の前で地面に突き刺した。てっきりひり降ろされると思っていたのだろう。俺のその行動を見た瞬間クリスタルリザードの表情が少し変わったのが目に見えた。

 しかし、ヤツは攻撃してこなかったことに反応し、俺の頭上からまた剣のような尻尾を振り下ろしてきたのだが、その刃は俺の眼前でぴたりと止まった。


 そしてヤツの体の下から突き上げるように、俺の魔装の剣が貫いていた。


「やっぱりお腹の部分は柔らかかったみたいだな。」


 俺が魔装を解除すると同時に力なく、クリスタルリザードは地面に伏し、俺に突き刺そうとしていたヤツの尻尾は狙いがそれて俺の真横の地面に突き刺さる。それと同時にクリスタルリザードは青い光となって俺の体に吸収されていく。すると声が響いた。


『レベルが1上昇しました。』


「おっ、久方ぶりのレベルアップだな。」


 やっぱりダンジョンで魔物を倒しているとレベルは上がりやすい。とはいえまだ俺のレベルは52。50を超えてから途端にレベルは上がりにくくなったが、それでも少しずつ経験値は溜まっていっているらしい。レベリング目的ならダンジョンにひたすら潜るのもありかもしれない。


 レベルアップしましたという声が響いた後は特に何もなし。特に新しいスキルを入手したというわけではなさそうだ。


 また一つレベルが上がったことを心の中で少し喜んでいるとこちらにスリーが歩み寄ってきた。


「お見事ですマスター。まさに弱点部分を意識外から狙った攻撃……あれはとても良い攻撃でした。それにしてもどうやってクリスタルリザードの弱点を見分けたのです?」


「あぁ、それならラピスがヒントだった。」


「ラピス……。あの居候のドラゴンですね?あのドラゴンのどこにヒントがあったんです?」


「ラピスって普段の姿は人に化けてる姿だが、元の姿は藍色の鱗に覆われてるドラゴンなんだ。でもある部分だけ鱗に覆われてなくてたぷんたぷんって揺れて柔らかそうなとこがあったんだ。それがちょうどお腹の部分だったんだ。」


「なるほど……そういうことでしたか。」


 ラピスが元の姿の戻った時ついつい目が行ってしまうんだよなぁ。最初に出会った時よりも明らかにたぷんたぷんしてるし、人の姿のままなら体型は変わらないように見えるけど、元の姿に戻ると以前よりも肉がついたのがはっきりとわかるんだ。

 いつかまた元の姿に戻った時に揉ませてくれってお願いしてみるつもりだけど、まぁ断られるだろうな。でもダメもとで頼み込んでみよう。絶対柔らかくて触り心地が最高……なはず。


「さて、それでアーティファクトはあの宝箱の中かな?」


「そうですね。罠の反応もないですのでそのまま開けてもらって構いません。」


「わかった。」


 さっきのクリスタルリザードが護っていた宝箱を開けると。そこには指輪のようなアーティファクトが入っていた。どうやらこれがというアーティファクトのようだ。


「この指輪みたいなやつが水の狩人ってアーティファクトで間違いないか?」


「はい、間違いありません。今いる地上では効果を発揮しませんが、水中や水がある場所での移動の制限がなくなります。」


 よし、これで求めていたアーティファクトは一つゲットだ。残るは人魚のイヤリング。この二つさえ揃えば、アルマ様が次に求めるであろうダイミョウウオにもきっと対抗できるはずだ。


「よっしゃ、残りは人魚のイヤリングだ。確かボスが持ってるんだよな?」


「はい。」


「じゃあ喜びに浸ってる場合じゃないな。早く次に行こう。」


「かしこまりましたマスター。」


 そして目的のアーティファクトのうち一つを入手した俺とスリーはクリスタルリザードがあ持っていた次の階層へと続く階段を下っていくのだった。


 果たして次の階層では何が待ち構えているのだろうか?





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る