第150話 成長、そしてあの言葉の真意
次の日いつものルーティーンのように俺はスリーに呼び出された。
「マスター、今日の戦闘訓練を開始します。」
「今日はスリーが相手してくれるのか?」
「はい。魔物との戦闘訓練よりもやはり、スリーが直接お相手する方が経験値が多いと判断しました。」
「うっし、なら今日も思いっきりいかせてもらうぞ?」
「いつになくやる気に溢れていますねマスター。」
やる気を見せる俺にスリーはそう言った。
「まぁな。ちょっと試したいものがあるんだ。」
「なるほど。それがよい結果を出すことを期待しております。」
「じゃあ時間もないことだし……早速行くぞ?」
「どこからでも、どうぞ。」
その言葉を合図に俺は全身に魔力を流して、身体能力強化魔法を発動させると軽く床を蹴った。それだけでただ魔力の細分化を使用していた以前のスピードよりも遥かに速い。
「……!」
スリーは一瞬驚いたのか目を少し大きく開くと、それをも上回るスピードで俺の目の前からいなくなった。
俺は加速していた体を急停止させると、クルリと後ろを振り向いた。すると、後ろにはスリーの姿がある。
「……マスター、ずいぶんお速くなりましたね?」
「ホントは初擊で決めれれば良かったんだが……完全に意表を突けたって思ったんだけどな。」
「いえ、間違いなく意表は突かれました。マスターのスピードを見誤り、0.1秒ほど対応が遅れましたから。」
「はは、0.1秒ね。」
まるで誤差の範囲内といった様子でそう言ったスリーに思わず苦笑いがこぼれてしまう。だが、今の俺はただスピードが上がっただけではない。
「じゃあ次、行くぞ?」
俺は全身に巡らせていた魔力を目と足に集めると再びスリーへと向かって突っ込む。普段ならば、俺の攻撃範囲に入った瞬間にはいつも目で追えないほどのスピードで彼女は俺の目の前から姿を消していたのだが……。
目に魔力を集めたおかげでかなり動体視力が上がっているようで、スリーがどこへ動いたのか少しだけ目で追うことができた。
「逃がすかっ!!」
急停止からの急加速でスリーが避けた方向へと向かって方向転換する。すると移動中の彼女の横に追いつく。
「ふっ!!」
「!!」
横に並んだ彼女に攻撃すると、彼女は俺の攻撃をあっさりと片手で受け止めた。そして軽く彼女が掴んだ手を振るうと俺の体が空中へと放り投げられてしまう。
「っ!?くそっ!!」
空中で何とか着地する体勢を整えると、俺はトレーニングルームの床に着地する。そして着地した俺にスリーが言葉を投げかけてきた。
「マスター、先ほどはスリーの動きが追えたのですか?それともスリーが避ける方向を勘で当てましたか?」
「追えたよこの目でしっかりとな。」
俺はわざと自分の目を指差しながら、体中に循環させていた魔力を一気に目に集めてスリーに見せた。
すると彼女は興味深そうにポツリと言った。
「なるほど、先ほど少しだけマスターの瞳から溢れていたその炎のような影は凝縮した魔力が体の表面上に現れた物でしたか。」
「ん?魔力が見えてるのか?」
「はい、先ほどからマスターの足と目にくっきりと。」
「そうか。」
見えてるんじゃ強化してる部位が丸見えだな。これは後で改善が必要かもしれない。
「スリーの
「その通りだ。」
「その魔法は魔力消費がとてつもなく激しいはずですが、マスター、今の魔力残量は問題ありませんか?」
「ステータスオープン。」
彼女の問いかけに答えるべく俺はステータス画面を開いて自分の魔力量を確認する。すると、さっき結構使ったと思ったのだが、称号の効果のおかげで今は魔力が全回復していた。
「問題ない。満タンだ。」
「……なるほど。どうやらマスターの成長速度をスリーは見誤っていたようです。いくら魔力の節約を会得したとはいえ、身体能力強化魔法まで使いこなせるようになるとは……お見事というほかありませんね。」
「お褒めにあずかって光栄だよ。」
するとスリーは何を思ったのか彼女の武器である二丁拳銃を装備した。
「それではマスター。先ほどスリーに一撃を与えるという目標は達成しましたので、次のステップに移ります。」
「へ?」
「今度はスリーも攻撃いたします。」
チャキッ……と音を立ててスリーは二丁拳銃をこちらに向けてくる。
「は、はは……それ、俺死なないよな?」
「ご安心ください。万が一、億が一にもマスターを殺すようなことは致しませんので。」
そしてその日からスリーの戦闘訓練はさらに過激さを増していった。そこでようやく俺は彼女が言っていたあの言葉の意味を理解することになる。
『以前マスターはナインとレベリングをしましたね?あれの約3倍と思っていただければ。』
本当の……真の地獄の戦闘訓練はここから始まったのだ。
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