第147話 リルの呼び出しは……


 リルに連れられて彼女の執務室へと連れられてきた俺はソファーに座らせられると、何やら何枚かの書類をもって前に座った。


「さ~てと、なんでキミがここに呼び出されたのか……思い当たる理由はあるかな?」


「いや~……特に悪いことはしてないと思うんですけど。」


「まぁ悪いことじゃないね。どちらかと言えば人助け的なことしなかった?」


 彼女のその言葉で俺はようやく思い当たる節を思い出した。


「あの~、もしかしてダンジョンのこと……ですか?」


「や~っぱりキミか。調査隊の精鋭がぼっこぼこにされたゲートガーディアンをあっさり倒したっていうからさ。そんなに強い人ってまぁあんまりいないからキミかな~って思って声をかけたんだけど、ビンゴだね。」


「なんかまずいことしちゃいましたかね?」


「いや全然?むしろギルド側からしたらお手柄だよ。まぁそのダンジョンの詳細な情報は後回しにしといて、私が聞きたいのはもっと別なことなんだけど。」


「もっと別なこと……ですか?」


「うんうん、キミさダンジョン攻略を二人でやってたって報告書にあるんだけど。だったらしいじゃ~ん?ん?」


 目を細めながらリルは俺に詰め寄ってくる。


「誰なのその女の人。もちろん答えないって選択肢は無いよ?これはギルドマスターである私からの調査目的の質問だからね。」


「あ、いやそんなリルさんが思っているような関係の人ではなくて、ただ魔王城でメイドとして働いてる女の人ですよ。」


「ふぅん?じゃあなんでメイドさんをダンジョンなんかに連れてったのかな?とてもじゃないけど戦力にはならないよね?」


「いやいや、それが俺よりも強いんですよ。しかも空間魔法みたいなのも使えるんで3ダンジョンの場所まで連れて行ってもらったんです。」


「キミよりも強いの!?そんなに強い人なら私の耳に入っててもおかしくないんだけどなぁ。」


「でも、リルさんは一回見たことありますよ?」


「え、嘘……どこで?」


「前にばるんフィッシュを釣るお祭りがあったじゃないですか、その時、リルさんが失くした釣り竿を届けに行ったときに俺と一緒にいた人ですよ。」


「あ、そういえばいたかも……。あの時はもう意気消沈してて周りを見れるような状態じゃなかったから。あんまり覚えてないんだけど。確かにキミの隣にメイドさんみたいな人がいた……かも?」


 確かにまぁあの時のリルは気が気じゃなかっただろうからな。おぼろげにしか覚えていないのだろう。


「まぁ、キミと一緒にいた人はお城のメイドさんなんだ。ちょっと安心。」


「何を安心する要素があったんですか。」


「え?だって、女の人と二人でダンジョン攻略って、なんか恋仲の人達みたいじゃない?」


「必ずしもそうとは限らないと思いますけどね……。」


「長い間独り身の私達からしたら男と女が二人きりのシチュエーションってそういう風な捉え方になっちゃうよ。」


 さらりとリルは自分で自虐するように言った。


「まぁまぁ、誤解も解けたところで早速本題に入ろっか。」


「今のが本題みたいなものじゃなかったんですか?」


「本題はダンジョン内容の調査報告だよ。まぁ前やったやつと同じ。ダンジョン内容の報告とゲートガーディアンがどんな魔物だったのか、何体出てきたかとか、後はボスがどんな奴だったか……この紙に記載してくれるかな?」


 そう言ってリルはこちらに何枚かの紙を手渡してくる。


 俺はそれの空欄の部分にダンジョンの中で目にしたことを記載していった。


「ひとまず俺がわかることはこのぐらいですね。」


「ん~、オッケーオッケー。これだけ書いてれば問題な~し。後はまたダンジョンの調査隊に売りつけとくよ。」


「それもしかして俺にもお金はいります?」


「残念だけど、ギルドからの公式な依頼じゃないから報酬金は出せないんだよね~。でもあっちからボーナスってことでいくらかもらえたらそれはキミに報酬として渡すよ。」


「期待しときます。」


 これで臨時収入となればいいんだが。まぁ期待して待っておこう。


「さてと、一応これで私からの用事は終わり。もう帰ってもいいよ~。それとも、私ももうすぐ仕事終わるし~?一緒に飲んでく~?」


「いえ、まだアルマ様の料理を作らないといけないんで、また夜にでも来ますよ。」


「それはざんね~ん。まぁ魔王様に料理を作るのがキミのお仕事だしね。無理に誘ったら私がジャックに怒られちゃう。」


「それじゃあ俺はこれで、失礼します。」


「うんうんありがとね~。」


 そして俺はギルドを後にして城へと戻るのだった。

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