第111話 依頼の後で
時間をかけて事後処理を終えた後、ナインにギルドの前に送ってもらった。
「ありがとなナイン。助かったよ。」
「マスターのお役に立てたのであれば何よりです。」
「それじゃあ俺はさっき倒した魔物をギルドに収めてくるから。」
「かしこまりました。それではナインはこれにて失礼いたします。」
そしてナインは城のほうへと歩いて行った。それを見送って俺はギルドの中へと足を踏み入れた。
「あっ!?もう帰ってきた。」
俺がギルドの中に足を踏み入れると、酒場にいたリルが驚いた表情で立ち上がる。
「まさか、もう依頼こなしてきた~なんて……言わないよね?」
「終わらせてきましたよ。ちゃんとレッドスキンとブラックスネーク両方倒してきました。」
「ええぇっ!?ここからその二つの依頼場所、かなり距離あるよ!?どうやってこんな短時間で行き来してきたのさ。」
「ちょっと移動魔法が得意な知り合いがいまして、その人に送ってもらったんです。」
「ほぇ~……。まぁいいや、私としては依頼さえこなしてくれればなんの文句もないからね。さぁ、流石にレッドスキンとブラックスネークをここで出されると困るからね、向こういこっか。」
そしてリルに連れられてたどり着いた場所は、ギルドの地下にある殺風景なだだっ広い一室だった。
「ここは?」
「ここは大きな魔物とかを討伐したときに素材を解体したりする……まぁいわば解体場だね。ここ最近出番はなかったけどさ。」
確かにこの広さなら巨大な魔物を運び入れても問題ないな。レッドスキンとブラックスネークの二体を並べてもスペースが有り余る。ここならあの毒の森で倒した魔物を全部並べられるな。
と、まじまじと眺めているとリルがあることを思い出して問いかけてきた。
「あ、そういえばバラックスネーク倒すとき大丈夫だった?」
「というと?」
「いやね、よくよく依頼書に目を通してみたら小さい文字でブラックスネークのいる森には変異種が大量発生してるって書いてあったからさ。」
「あぁ、どおりで……。」
「あ、その反応だとやっぱり他の変異種にも襲われたみたいだね。」
ナインも言ってたけど、俺達に襲い掛かってきた魔物の大半が変異種だったらしいからな。ずいぶん状況がおかしいなとは思ってたが……そういうことだったのか。
「まぁ、数は多かったんですけど何とかなりましたよ。」
「キミがこうして無事に帰ってきているのがなによりの証拠だね。さてと、それじゃあ……そろそろ確認しようかな。」
「わかりました。」
俺は収納袋をさかさまにすると、そこからレッドスキンとブラックスネークが姿を現した。
「レッドスキンのほうはかなり綺麗に倒したみたいだね。こいつ治癒能力高くて大変だったでしょ?」
「まともな攻撃じゃすぐに回復されてなかなか大変でしたね。」
「ま、ふつうは何人かでパーティーを組んで絶え間なく攻撃して倒すような魔物だからね~。そんなのを単騎で倒すキミもキミだよ。……それでまぁレッドスキンはひとまず置いといて。」
リルは背中からばっさりと切られ背開きの状態になってしまっているブラックスネークに視線を向けた。
「これ、どうなってんの?背中からバッサリ切られて体がぱっくり開いちゃってるけど。長いこと私もハンターとしていろんな魔物の死体とか見てきたけど、こんなやられ方してる魔物見たことないよ?」
まじまじと背開きになっているブラックスネークを眺めてそう口にしたリル。彼女のようなベテランハンターでも背開きにされた魔物は見たことがないようだ。
「まぁこれもある意味綺麗っちゃ綺麗だけどもね。」
「あはは……。」
「それで?一応この2体で依頼達成は確認したけど……その表情だとまだあるんでしょ?毒の森で倒した魔物がさ。」
「流石察しがいいですね。」
「キミからしたらそっちのが本命なんじゃないの?」
「それに関しては否定しないです。」
察しの良い彼女に思わず苦笑いしてしまう。
「まぁまぁ、今回キミから買い取った魔物はぜ~んぶあっちのギルドの資金で買い取ってもらうから。遠慮なく出しなよ。」
「それじゃあ遠慮なく。」
俺は再び収納袋をさかさまにすると、そこからまるで雪崩のように毒の森で倒した魔物たちがあふれだし、大きな山を作り上げた。
魔物で作られた山を見てリルは呆れ顔で言った。
「うわ~……こりゃまたずいぶん倒したねぇ。」
「向かってきたやつ全部倒しましたから。」
「他人事だけど、あっちのギルドの金銭面が火の車になりそうだね。まっ、自業自得かな。」
リルはそう言うと、くるりと踵を返した。
「あれ、魔物の数とか数えないんですか?」
「あ、いーのいーの。そういうのは専門の人がいるからさ、そういう人に任せとけばいいの。今日はもう帰っちゃってるけど、明日の早朝には来るし~。」
「そう、ですか。」
「あ、報酬のほうは数日以内に向こうから取り立てておくから。少しだけ待ってほしいな。」
「わかりました。」
「よ~し、それじゃあ上に戻って飲みなおそ~!!」
結局上の酒場に戻って飲みなおすこととなり、今日も朝帰りになることを確信するのだった。
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