第072話 ステータスの果実を求めて
まず最初に赴いたのは、マグマが煮えたぎる活火山の火口付近だった。ボコボコと煮え立つマグマの熱が遠くからでもヒリヒリと伝わってくる。
「うおっ……ここは火山か。」
「ここには直近ですと、24年前に力の果実が出現したと情報が残っています。」
「直近で24年前なのか。」
「はい。」
辺りを見渡した限り、ここにあるのは岩とカラッカラに乾いた草。俺が以前見た力の果実が実っている木はまるで見えない。
「ここにはなさそう……だな。」
「周辺の地形をスキャンした結果、半径1km以内にそれらしきものは見当たりませんでした。次の候補地に行くことを推奨しますマスター。」
「あぁ、そうしよう。」
またしてもナインに空間を切ってもらい、新たな候補地へと降り立った。
「今度は砂漠か?うぅっ……寒っ!!」
足をつけた土地は、どこまでも砂丘が広がっていた。夜の砂漠は昼間とは違いとんでもなく寒い。
月明かりで照らされた砂丘を見渡すが、どこまでいっても砂しか見えない。
「な、ナイン?ここにもないみたいだが?」
「そのようですね。では次へ参りましょうマスター。」
それから俺とナインは、この世界にある様々な場所に訪れステータスの果実を探し回った。景色を楽しむ間もなく、周囲にステータスの果実がないと分かればすぐに次の場所へ移動する。これをひたすらに繰り返していた。
そしてそれを繰り返すと同時に、ナインは候補地をどんどん絞り込んでいるらしい。彼女曰くこれから訪れる場所は可能性がかなり高いという話だ。
「それではマスター、次の場所に行きます。」
「あぁ、頼む。」
何度めかも知れない転移で、たどり着いたのは巨大な遺跡だった。
「ここはどうだナイン。」
「マスター、遺跡内部にそれらしき反応があります。」
「ようやく当たりってわけか。」
遺跡の中へと足を踏み入れようと歩みを進めた時だった。
「マスター、生体反応が多数遺跡内部に確認できました。恐らく魔物だと思われます。」
「ん、目的地の付近には?」
「一際強力な反応があります。」
「ステータスの果実を守ってるのか?……まぁいい。行くぞ!!」
「了解しました。内部には幾つか罠のような物もあるようなのでご注意下さい。」
「わかった。」
ナインと並走して中へと飛び込むと、早速彼女が告げた。
「マスター、5マス先の床に罠です。」
「了解っ!!」
ナインの指示のもと罠が仕掛けられている床を飛び越える。
「次の道は?」
「道の突き当たりを右です。その先階段を下ってください。」
ナビゲートを受け、迷わずに目的地へと向かって突き進む。
「マスター、強力生体反応に動きがありました。恐らくこちらに気が付いたものと思われます。」
「ん、わかった。」
「この道を真っ直ぐ進めば遭遇する計算です。」
彼女の計算どおり、一本道を抜け大広間のような場所に辿り着くと同時に、俺の眼前に巨大な岩石が迫る。
それと同時に時間の流れが遅くなった。
ゆっくりと迫ってくるその巨大な岩石は、大きな体躯の石の魔物の拳だった。
その拳をかわすと、俺は地面を蹴って飛び上がり空中で強く拳を握る。
「退けッ!!」
そして石の魔物の頭に向かって全力で固く握り固めた拳を振るった。すると、石の魔物の首から上がバラバラに砕け散り、辺りに飛散する。
首から上を失った魔物は背中から床に倒れ、動かなくなった。
「流石ですマスター。」
「デカイ体にしては案外脆かったな。」
「レベル差がありますから当然かと。」
「ほ~ん、それよりもあれ……ステータスの果実で間違いないか?」
この巨大な石の魔物の背後には紫色の果実が実る大木が生えていた。
「はい、魔の果実で間違いありません。」
「よしきた。」
ナインに確認がとれたところで、実っていた魔の果実4つを収穫する。
すると、以前力の果実を採ったときと同様にあっという間に木は枯れ果ててしまった。
「ひとまずこれで一種類は確保した。後は力と守、そして命の三種類か。」
恐らくこの魔の果実というのは魔力を底上げしてくれる果実なのだろう。本当ならこのまま一つぐらい食べて魔力を増加させたいところだが……。
あの性格の悪い文章を見た限り、後から何個用意しろだのなんだの言われたら面倒だからな。ひとまず手はつけないでおこう。
「ナイン、次の場所に案内してくれ。」
「マスター、休憩はよろしいですか?」
「問題ない。魔力も使ってないし、体力も殆ど削られてない。」
「わかりました。では次の場所へ行きます。」
休む間も無く、俺は次の場所へと赴きステータスの果実を探す。
夜明けにはまだまだ時間がある。あの無茶な要求を書いたヤツの思惑通りにはさせない。絶対にあと三種類……見つけ出してやる!!
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