第038話 ゲートガーディアン
『レベルが1上昇しました。』
『レベルが1上昇しました。』
『レベルが1上昇しました。』
魔物を倒す度に、レベルアップを知らせる声が響く。凄まじいペースだ。
「ふぅ……休む暇もないな。」
「これだけ立て続けに魔物が現れるダンジョンは我も聞いたことがない。一撃で屠れるとはいえ、少し手間だの。」
このダンジョンに足を踏み入れてからというものの、休む暇なく魔物と戦闘を繰り広げていた。倒しても倒してもすぐに湧いてくるのだ。そのくせ魔物一匹一匹が強いため、恐らく1人では捌けなかっただろう。無理せずラピスを連れてきて良かったな。
一匹……また一匹と魔物を倒していく最中、ラピスがこちらを向いて言った。
「カオル、このままではキリがない。我が道を開く、抜けるぞ。」
「わかった。」
そしてラピスが両手を前に出すと、彼女の前で空気が渦巻き始める。
「
そう彼女が口にした直後、ラピスの直線上にいた魔物が突如として起こった竜巻で切り裂かれ、一時的に道が開けた。
「今だカオル!!」
合図と共に開けた道へと向かって走ると、魔物の包囲網を抜け出すことができた。
「この先はどうする?」
「ひとまず走りながら次の階層へと続く道を探す。止まればまた囲まれるぞ。動き続けるのだ。」
「わかった。」
前を走るラピスにひたすらに着いていく。俺達が通った後には、遅れて魔物が送られてきていた。
ラピスと共に魔物に囲まれないように走り続けているが、いっこうに次の階層へと続く道は見つからない。その状況にラピスは舌打ちする。
「チィッ……このダンジョン広すぎる。次の階層が見つからん。」
彼女の言うとおり、このダンジョンの中はとてつもなく広い。
悪態をつきながら走り続けていると、俺の前にいたラピスが突然ピタリと足を止めた。
「ラピス?」
「ここから先には進めぬ。」
「進めないって……どういうことだ?」
「こういうことだ。」
ラピスが前に手を伸ばすと、まるで透明なガラスに防がれているように、伸びていた手がピタリと止まる。
「ここが階層の端……行き止まりだ。」
「端があるってことは無限に広がってる訳じゃないんだな?」
「うむ。空間に限界があるのなら、その内側をしらみ潰しに探すのみだ。カオル、まだ走れるか?」
「あぁ、まだいけるさ。」
「よし、では行くぞ。」
階層の範囲の限界がわかったところで、再びラピスと共に走り出す。
そして内側へ内側へと走っていると、突然進んでいる先に魔物が現れた。今までこんな風に先読みして魔物が配置されることはなかったのだが……。
そう疑問に思っていると、ラピスが足を止めた。
「カオル、ゲートガーディアンだ。」
「ゲートガーディアン?」
「高難度のダンジョンに稀に現れる、次の階層の入口を守る魔物だ。」
よく見ると、現れた魔物の背後には地下へと続く階段がある。どうやらあそこが次の階層への入口らしい、
「強いのか?」
「さっき相手にしていたやつらよりは強いだろうな。」
ほぅ……ならレベルアップのチャンスだな。
そう確信した俺は、ラピスよりも先に飛び出した。
「か、カオル!?」
「ラピス、こいつは俺がもらう。」
そう彼女に告げると、一気にゲートガーディアンの懐に入る。すると、石の石像のようなゲートガーディアンの造りが良く見えた。表現するのなら、多種多様な鉱石を繋ぎ合わせて作った
見るからに固そうだが、攻撃しなければ倒せない。
「ふんっ!!」
踏み込んだ勢いそのまま、体を捻り遠心力と体重をフルに乗せた蹴りをお見舞いしてやった。
蹴りが当たるインパクトの瞬間に伝わってきたのはまるで鉄板のような感触。一瞬、足に骨が痺れるような痛みが走る。
「……っ!」
痛みと引き換えに、全力で放った蹴りだったがゲートガーディアンの固い装甲を貫くには至らなかった。
「グォォォォッ!!」
懐に飛び込んでいた俺目掛けて、顔よりも大きな拳が飛んでくる。
「くっ!!」
まともに食らえば致命傷は必至だっただろうが、幸いスピードはないため、後ろに軽く飛び退くだけで簡単にかわすことができた。
「いててっ……かってぇな。」
拳で殴らなくて良かった。あんなのを素手で殴ろうものなら、拳が壊れる。
「さてと、どうするかな。」
全力の攻撃で傷一つつけられないなら、俺の物理攻撃はほぼ効かないと考えてよいだろう。
攻略の手段を考えていると、ゲートガーディアンの足からまるでブースターのように炎が吹き出し始めた。それに嫌な予感を感じ取った次の瞬間……ピタリと時が止まった。
「危険予知が発動したってことは……こいつが次に仕掛けてくる攻撃は死ぬやつだ。」
先ほどいた場所から何歩か離れると、再び時が動きだした。それと同時に、足の裏のブースターでとんでもない速度に加速したゲートガーディアンが、先ほど俺がいた地面に拳をめり込ませていた。
良く見ると、大きな拳にもブースターのようなものがついている。
「なるほど……遅さはそのブースターでカバーするのか。」
良く考えて設計されてることで……。まぁただの固いウスノロがゲートガーディアンなんてできるわけないしな。それなりの能力って感じだ。
分析していると、俺という標的を見失っていたヤツと目があった。そして再びブースターから炎が吹き出す。
「ホントはこんなぶっつけ本番で使うものではないんだろうが、やってみるか。」
両手の平を手刀の形にして構えると、俺は両手に魔力を集中させた。
「魔力操作。」
イメージするのは、
俺のイメージ通りに魔力は手の平で刃物のような形に変わり始めた。
後は、
念じるごとに、手の平の魔力がギチギチと硬くなっていくのが感じ取れた。次に目を開けると、ゲートガーディアンの拳が目の前に迫っていた。
「グォォォォッ!!」
「ふっ!!」
紙一重でゲートガーディアンの拳をかわす。スレスレを通りすぎたと思ったが、頬にピリリと引き裂かれるような痛みが走る。
かすり傷なら問題ないっ!!
そして俺は魔力を纏わせた手刀をゲートガーディアンの肩の関節目掛けて一閃した。
すると、ゲートガーディアンの右腕が体を離れて地面に落ちた。
「もう一本!!」
勢いそのまま今度は左肩の関節を切り裂く。
両の腕を失ったゲートガーディアンは最後に口を開けると、そこに魔力が凝縮していく。
「させるかッ!!」
手をゲートガーディアンの口へと向けると、魔力に
すると、魔力の刀がまっすぐに伸びてゲートガーディアンの口を貫いた。
それが致命傷になったようで、ゲートガーディアンは青い粒子となって俺の体に吸収され始める。
「勝った……。」
そう確信すると、手に纏わせていた魔力か消えていった。
そして声が響く。
『レベルが3上昇しました。』
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