第5話 未来へ

お前と過ごす毎日の中、繰り返される朝と夜。

何度過ごしたかわからない朝。

いつものようにお前に会えると思っていた。


悪い。

思ったより早く俺の体に限界が来たみたいだな。

本当はお前にこんな姿は見せたくなくて、お前を悲しませたくなくて……。

お前の前からいなくなるつもりだったんだけどな。


なぁ、もうそんなに泣くなよ。

俺はいるから。

お前のこと、見えてるから。

喋れなくなったけど、ちゃんといるよ。


冷たくなった俺の体を抱きしめて、お前はいつまで泣くだろうか。

どうすれば泣きやましてやれるだろうか。


……ごめんな。


短い間だったけど、お前と暮らした数か月は楽しかったぜ。

最後、悲しませるかたちになっちまったが、会えて良かった。


俺、生まれ変わって人間になるから。

もう一度、お前に会いに来るから。


「また会おうな。待ってろよ」


聞こえるはずがないのは分かっている。

それでも、どうしてもお前に伝えておきたかったんだ。


「私、待ってるからね……約束」

俺を抱きながら、涙ながらにお前のつぶやく声が聞こえた。


えっ……俺の声、聞こえたのか?

まさかな。そんなはずないよな。

でも……待っててくれよ。

約束だからな。



あれからどのくらい経っただろうか。

長かった気がするし、短かった気もする。


ようやく来られたんだ。

お前の家に、俺は帰ってきたんだ。

お前は驚くかな。


お、ちょうど出てきたようだ。

「なぁ、俺のこと、覚えているか?」

「え?あなたは?」

やはり、覚えてはいないか。

「前、雨の中、お前に拾われた。生まれ変わると約束した」

「う、そ……ほんとにきみなの?」

「ああ、戻ってこれた」

にかっと笑いかけてやると、ぽろぽろと涙をこぼしなら笑い返してくる。

「これからは、これからはずっと一緒にいられるんだよね?」

「ああ。お前が望むなら。お前がいてもいいと言ってくれるなら」

「じゃあ、これからは一緒にいて!ずっとずーっとね」

愛おしいお前の笑顔。

猫の時から嗅いでた匂い。

これからも傍で感じることができるんだな。


あぁ……本当にお前に出会えてよかった。

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