第5話 未来へ
お前と過ごす毎日の中、繰り返される朝と夜。
何度過ごしたかわからない朝。
いつものようにお前に会えると思っていた。
悪い。
思ったより早く俺の体に限界が来たみたいだな。
本当はお前にこんな姿は見せたくなくて、お前を悲しませたくなくて……。
お前の前からいなくなるつもりだったんだけどな。
なぁ、もうそんなに泣くなよ。
俺はいるから。
お前のこと、見えてるから。
喋れなくなったけど、ちゃんといるよ。
冷たくなった俺の体を抱きしめて、お前はいつまで泣くだろうか。
どうすれば泣きやましてやれるだろうか。
……ごめんな。
短い間だったけど、お前と暮らした数か月は楽しかったぜ。
最後、悲しませるかたちになっちまったが、会えて良かった。
俺、生まれ変わって人間になるから。
もう一度、お前に会いに来るから。
「また会おうな。待ってろよ」
聞こえるはずがないのは分かっている。
それでも、どうしてもお前に伝えておきたかったんだ。
「私、待ってるからね……約束」
俺を抱きながら、涙ながらにお前のつぶやく声が聞こえた。
えっ……俺の声、聞こえたのか?
まさかな。そんなはずないよな。
でも……待っててくれよ。
約束だからな。
◇
あれからどのくらい経っただろうか。
長かった気がするし、短かった気もする。
ようやく来られたんだ。
お前の家に、俺は帰ってきたんだ。
お前は驚くかな。
お、ちょうど出てきたようだ。
「なぁ、俺のこと、覚えているか?」
「え?あなたは?」
やはり、覚えてはいないか。
「前、雨の中、お前に拾われた。生まれ変わると約束した」
「う、そ……ほんとにきみなの?」
「ああ、戻ってこれた」
にかっと笑いかけてやると、ぽろぽろと涙をこぼしなら笑い返してくる。
「これからは、これからはずっと一緒にいられるんだよね?」
「ああ。お前が望むなら。お前がいてもいいと言ってくれるなら」
「じゃあ、これからは一緒にいて!ずっとずーっとね」
愛おしいお前の笑顔。
猫の時から嗅いでた匂い。
これからも傍で感じることができるんだな。
あぁ……本当にお前に出会えてよかった。
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