にゃんこな俺とお前の奇跡

宗京 季沙

第1話 出会い

「ごめん。ここで少し待っててな」


俺、いったいいつまで待てばいいんだろうか。

もうあいつと別れて3日になるな。


あいつ、まさか俺を待たせていることを忘れているんじゃないだろうな?


……まさか、な。


しかし、腹が減ったな。

雨まで降ってきやがった。



あー……。

あいつが俺を待たせてからもう7日。

ずっと雨も降ってるし、寒いな。

雨を避けられるような物もねぇし、どうすっかな。

腹も減ったし……やべぇ、座ってられねぇ。


体力的にも限界だった。

だから、俺はその場にうずくまることにした。

寒さも少しはマシになる。

雨風凌げる場所に動いても良かったんだが、あいつが待ってろと言った、この場所から離れたくはなかった。


だけど、もう薄々は気づき始めていた。

あいつは迎えに来ないんじゃないか、俺は捨てられたんじゃないかって。


そんなこと、信じたくはなかったが。



その日の夕方、俺の方に近づいてくる足音があった。

あいつなんじゃないかって、急いで顔を挙げた。

でも違っていた。


女だ。

傘をさした、あいつと同じくらいの歳の女が歩いてきていた。


違ったか……。

俺は興味をなくし、また顔を下げてうずくまった。


そのまま足音が通り過ぎるのを待っていると、ふいに音はやみ、俺に降りかかっていた雨もやんだ。


顔を上げると、さっきの女がのぞき込んでいた。

どうでもいい。

めんどくさいので、無視した。


「大丈夫?一人なの?」


なんだよ、うるせぇな。

一人だよ。見てわかんねぇのかよ。


「風邪ひくよ」

分かってる。うるせぇ。

「おいで」

顔を下げようとした俺は、女は無遠慮に抱き上げた。

普段なら抵抗して暴れてやるところだが……腹も減ったことだし、大人しくしといてやるか。

女は、俺を抱えたまま歩き出した。


あいつと来た道とは違う方向に歩いていた。

しばらくすると女の家についた。

女は、俺の体を拭き、水と茹でただけのササミを出してくれた。


あいつもよくくれてたな、そんなことを思いながら平らげた。

満足して女を見ると、にこにことしていた。



それが、おまえとの出会いだったな。

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