第37話 十過 5

奚謂耽於女樂?昔者戎王使由余聘於秦,穆公問之曰:「寡人嘗聞道而未得目見之也,願聞古之明主得國失國常何以?」由余對曰:「臣嘗得聞之矣:常以儉得之,以奢失之。」穆公曰:「寡人不辱而問道於子,子以儉對寡人何也?」由余對曰:「臣聞昔者堯有天下,飯於土簋,飲於土鉶。其地南至交趾,北至幽都,東西至日月之所出入者,莫不賓服。堯禪天下,虞舜受之,作為食器,斬山木而財之,削鋸脩其迹,流漆墨其上,輸之於宮以為食器。諸侯以為益侈,國之不服者十三。舜禪天下而傳之於禹,禹作為祭器,墨漆其外,而朱畫其內,縵帛為茵,蔣席頗緣,觴酌有采,而樽俎有飾。此彌侈矣,而國之不服者三十三。夏后氏沒,殷人受之,作為大路,而建九旒,食器雕琢,觴酌刻鏤,白壁堊墀,茵席雕文。此彌侈矣,而國之不服者五十三。君子皆知文章矣,而欲服者彌少。臣故曰:儉其道也。」由余出,公乃召內史廖而告之,曰:「寡人聞鄰國有聖人,敵國之憂也。今由余,聖人也,寡人患之,吾將柰何?」內史廖曰:「臣聞戎王之居,僻陋而道遠,未聞中國之聲。君其遺之女樂,以亂其政,而後為由余請期,以䟽其諫。彼君臣有間而後可圖也。」君曰:「諾。」乃使內史廖以女樂二八遺戎王,因為由余請期。戎王許諾,見其女樂而說之,設酒張飲,日以聽樂,終歲不遷,牛馬半死。由余歸,因諫戎王,戎王弗聽,由余遂去之秦。秦穆公迎而拜之上卿,問其兵勢與其地形。既以得之舉兵而伐之,兼國十二,開地千里。故曰:耽於女樂,不顧國政,則亡國之禍也。


 この辺はわりとお題目通り。すげえ、良心的だ!(暴言)

 秦の北にいた蛮族国に由余と言う賢人がいた。その由余、昭襄王に目通りすると天下統治の術について聞かれる。そこで由余が答えたのは「質素倹約がいちばん。実際これを守らなかったからいにしえの聖王の権勢も徐々に落ちていった」と語る。

 由余が退出したあと、昭襄王「隣国に賢人がいられるとこっちとしては災いやな……せや! やつの国の王に美女楽団を送り、その上で由余をしばらくうちに引き留めておこう!」と目論む。もくろみは成功、由余が国に戻ったときには王はすっかり秦の音楽美女に骨抜きにされていた。度々諫言するも王が聞く耳を持つことはなく、結局差し向けられた秦の軍勢によって攻め滅ぼされた。その後由余は渋々秦に仕えることにしたのだとか。

 こうして女と音楽が一つの国を滅ぼすに至った! しかもそれは他ならぬ秦が繰り出した作戦によるもの! これを教訓としないわけにはいかないよね! というわけだ。

 この事例については「なるほど、そうなんだろうなぁ……」と思わずにはおれません。もっとも、現代にはこれら以上の「強烈な」娯楽が多くなってしまっているわけですがね!

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