街。

 星の光。

 ネオンの灯り。


「綺麗ですね」


「だろ?」


「こんなに綺麗だとは思わなかった」


「しぬか?」


「いえ」


 今は、このまま。


「この景色を見ていたいです」


「よし。私の部屋に行こうか。朝焼けが綺麗なんだ」


 手を繋いで。


「いいのかな」


「なにが?」


「このままで。生きてて」


「部屋は高層階だけど、下が特殊アスファルトだから落ちてもしなない」


「そうですか」


 立ち止まる。


「しにたいか?」


「いえ。もしかして、ですけど。包丁とまな板とか、鍋とか」


「無い」


「野菜とか肉とかも」


「無い。料理しないもん」


「そうですか。じゃあ先にコンビニに」


「何か作ってくれるの?」


「おなかすきました」


「しぬなよ」


「え?」


「包丁ではしぬなってこと」


「よかった。しぬのを止められたのかと思った」


「止めないよ。止める資格がない。路上に転がって、わたしもしぬところだったし」


「ありがとう」


「朝焼けを見てほしいとは、思うけど」


「じゃあ、朝焼けまでは起きてますよ。コンビニはどこに?」


「そこ。交差点のところ。ドリームロールって書いてある」


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