格闘技大会とタバコ

~キュート同士の格闘技大会~


 第5次テロリスタン戦争中のこと!

 某国にて――かわいいい奴だけが参加できる格闘技の大会が開かれていた!

 生物なら何でも参加させることが可能で、ルールも最低限必要な分だけというカオス!


 この大会の優勝者に送られる莫大な懸賞金を目当てに、ガリベンを率いる先生はアイ坊とそのサポート要員数名を送り込んだ!

 そうして送り込まれたアイ坊はメイドに扮して参戦!

何とか勝ち残って――残すは決勝戦のみという段階に至る!

 しかし、その決勝戦の相手は――!



「これがお前の決勝戦の相手だ。ハムスターのスター君だってよ!」

 アイ坊の控室で、商人が対戦相手の写真をアイ坊とドーストの二人に見せる。

 商人の言葉通り、写真の中にはかわいいハムスターがただ一匹。普通に小さい奴。

色々な意味で一般人がこいつと戦うのは不可能である!


 このハムスターを見たドーストは「弱そうな奴だな」と感想を漏らした。



「だが数多くの対戦相手を不戦敗に追い込んできた、前大会の猛者だ。侮れねえぞ!」

「……こいつとやれるか?」

 商人の説明を聞いたドーストがアイ坊に戦う意思があるか聞いてみた。

 相手はあの小さくてかわいいハムスターがただ一匹。


 そんな無表情にあの写真を見ていたアイ坊の口から出た答え――それは!






「無理」




~ハムスターの天命~


 先生の命を受けて大会に参加したアイ坊だが、ハムスターと戦う天命が発覚!


「ふざけるな、お前! 戦いもせずに負けるなんてサムライにあるまじき行為だ!」

 無表情のままアイ坊の胸ぐらを掴んで戦うように迫るドースト。

 迫られているアイ坊は涙ながらに「無~理~」とあのハムスターとの決戦を拒否!



 そんな二人を見かねた商人は「よせ!」とドーストに声をかけた。


「どっちにしろ負けは確実なんだ。こいつの意思を尊重してやれ!」

 この商人の発言を補足すると、商人は次の事態を恐れていた。

 まともに戦えばあのハムスターをどうしても殺してしまう。

 不殺が前提のこの大会では、大戦中に対戦相手を殺してしまった者は即失格!


 優勝するにはあのハムスターを殺さずにノックダウンする必要がある。

しかしそのような高度な技量なぞ――当時のアイ坊に備わっていない……。



「仕方ねえ。一緒に運営まで行ってやるから、自分の口ではっきり言うんだ!」

 無表情ながらも、怒りを内に秘めたままアイ坊の手を引っ張って控室を出るドースト。

 そんなドーストに連れられているアイ坊は今も涙ながらに「はい~」と承諾!



 そんな二人が数分後に控室に戻ってきた。内、アイ坊が発した第一声が――。






「スター君が寿命で死んじゃったから、不戦優勝しました!」

 一般的なハムスターの寿命は数年。ハムスターの天命は残酷であった……。




~タバコ~


 第5次テロリスタン戦争末期のこと。ガリベンを率いる先生は門弟達を前に宣言!


「本日は北部政権の最高指導者リーダーを倒すべく、特注の煙草を用意した!」

 この宣言と同時に商人が予め調達していた「これだ!」と件の煙草を掲げた!

 この煙草に門弟達は「おおーっ!」と驚嘆するが……。



「先生。素晴らしいお考えですが、成功するのでしょうか?」

 ただ一人、兄貴だけがこの作戦への疑問の声を上げた。

 これに先生は「正直、即死させることは不可能だろう」と結論を吐いた――だけでなく。


「何しろ敵の検査を突破するために、毒の威力と量を抑える必要があった……」

 門弟たちを前に当作戦の裏事情を話し、残念がる先生。



「最低でも一度に19本も吸わないと即死しない代物タイプだからな」

「とはいえ、じわじわと最高指導者やつの不調を引き起こすだけでも大戦果になるぞ!」

 商人の説明の直後に、先生は門弟達を前に当作戦の目的を宣言する!



 それから数か月後、北部政権に潜んだ密偵から「最高指導者死亡!」の情報が届いた!

 本来の目的以上の大戦果を掴んだ事実に誰もが驚くものの、喜ぶ者は誰一人いない。

 何故なら掴んだ情報によると、亡くなった最高指導者の口には……。





「何と――最高指導者やつの口にタバコの束が……。それも19本だとっ!?」

「ヤバい事態だ……!」

「一体、何が……!?」

 先生はただ驚き、商人はただ焦り、兄貴及び他の者達はただ混乱するだけであった…‥。




~タバコの真相~


 北部政権の正式名称は「評議会共和国連邦」。その指導政党は「連邦血布けっきん党」。

 そして同党の第一書記を務める者が――同国の最高指導者である!

 その者の名を「イオセビ・ウリヤノフ」という。

 そんな彼が執務室で鋭く眼光を光らせている……。



「ふーっ……!」

 最高指導者の目の前で、一本の煙草を吹いてみせた兵士。リラックスとは真反対の境遇。

 その煙草は最高指導者の為だけに調達された煙草の箱から取り出された代物。


「同志、煙草は問題ございません!」

「うむ、下がっていい」

 護衛部隊の隊長から先の煙草について報告を聞いた最高指導者――ウリヤノフは自身の執務室から他の者達全員を部屋から出した。

 彼が煙草を吸う際は毎回、室内を自分だけの空間としている。何故なら……。



「よ~しっ、今日は19本に挑戦するぞ~っ!」

 自分の口に何本の煙草が入り、且つ一気に吸えるかに挑戦すること!

 これが彼の他人には見せられない至福の時である。この時までは……。



 それから数時間後、ウリヤノフからの連絡がないことを不審に思った側近らが執務室に突撃すると、あの挑戦中のまま死に服していた彼を発見してしまい……。






「うおおおおおっ、同志のお口に大量の煙草がああああっ!?」

「猟奇暗殺かああああっ!?」という具合に大パニック。


 皆様は絶対に先程のような喫煙方法を真似しないようにしましょう。

 最悪の場合、この後の北部政権のように、自国に内戦を引き起こす恐れがあります。

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