モップはてめえが(真鶴コウのゆるエッセイ)

真鶴コウ

1/11(火)マスクはお顔のパンツという意識

もともと喉が弱いタチだし声優もしたりするため、コロナが流行る前からマスクは必需品だった。


顔半分隠せて化粧もサボれるということで私はマスクが大好きだ。

こんな世の中になってしんどいことばかりだが、この点だけは神が私に微笑みかけたと思っている。


なので、着けたくないと飛行機を止めたり、議会から退場させられているおじ様方の気持ちがちっとも分からないし、自分はマスク美人だと調子に乗るほどマスク生活を気に入っていた。


しかし、最近ちょっとだけ自分の中で戦っていることがある。


議題は「己の顔面に着けるマスクはどこまで許されるか」ということなのだが、誰にも相談できずに悶々としている。

されたって困るだろう、分かってる、だからしない。


きっかけは去年後輩主催のイベントに出演させて頂いた時、私は市販のごくごく普通の真っ白な不織布マスクで出た。


が、他の出演者の皆様は色とりどりの可愛らしいマスクを着け(調べてみたら血色マスクというらしい)シルクのような、実に品のいいマスクを召されている。


衝撃だった。

人前に立つとき、人は「勝負マスク」なるモノを着けるのだと、その時初めて知った。

(だってコロナでずーっと引きこもってたんだもんっ!)


マスクは……そう、パンツだ。

市販のごくごく普通の真っ白な不織布マスクは、これすなわち白ブリーフで皆様の前に立つのと同じだ。

演者としての自分のプロ意識の低さに愕然としたのを覚えている。


そこからいろんなマスクを気にするようになった。

が、白ブリーフ生活が長かったので急にレースだの黒だのシルクだの言われても、自分はどこまでやっちゃっていいのか加減が分からない。


真っ黒はイケない。

韓流スター気取りかよと常々思っているので、ブーメランが突き刺さり自分もそう思われるのが辛い。


レースやら、かわいらしい模様が施されているものもイケない。

そいつらが自分では手に負えないなにかを主張してしまう気がする。


中には本当に「ブラ半分切ってきたん?」って感じの下着みたいなマスクを着けている方もいて、これはもう公然わいせつ罪にならんのかとハラハラすることさえある。


かといって、色付きのものも手が出しにくい。

私はパーソナルカラー診断によれば「冬・ブルべ」というグループに分類されていて、パステル系などぼんやりした色を着けると血色が悪く映るらしい。

青みの入った色やショッキング系の色が似合うらしいのだが、それこそそんな派手なマスク……主張が激しすぎて心がもたない。


世の中の人たちは、どこでどうやってフィッティングしてマスクと折り合いをつけているのだろう。


誰も人の顔そんな見てねえよというご意見も、分かる。

でも、気づいてしまったからには、んもう「そういう世界」で生きていかねばならぬ。


人前に晒しても失礼にならぬ、己の面の身の丈に合うマスクに出会いたい。

そんな願いを胸に、今日も私は大きめの白ブリーフで顔半分覆い隠し化粧をサボるのである。



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