全知全能の神になりたい僕は、もぐらから始めることにした。
天音 いのり
第1話 自由を夢見る男、相棒を片手に
「この世界は、誰にも渡さない。何せ俺のだからな!うっはっはっはー!!」
太陽が空のてっぺんに昇る頃、未だ布団のなかで幸せそうな顔をし、叫んでいる男がいる。
だがしかし、本当の広瀬はこんなキャラじゃない。俺だなんて絶対に言わないし、こんなに大きな声を出すこともできないのだから。
***
「あんた、いつまで寝ているの?!もうお昼よ。その小汚ない顔を、さっさと顔洗って来なさい」
うーん…。頭が痛い。
母さんの口うるさい小言が、今日も始まった。
こうなると起きるしかなくなる。いつまでも言われ続けるのは、苦痛でしかないから。
「ふあぁ」
「欠伸なんかして、随分とのんきなものねぇ。あんたが毎日大声で、訳のわからない変な寝言を言うせいで、わたしゃ恥ずかしいったらありゃしない。ご近所さんに噂されてるってのに」
「そんなこと僕に言われたって、知らないよ」
「はぁ…。なんでこんな息子に、育っちまったんだろうねぇ」
僕だって、毎日毎日母さんに嫌みを言われる生活には、もううんざりなんだ。
母さんの顔を見ないように、足早に洗面所に向かう。
心に溜まったものを吐き出すように、勢いよく水を流した。溢れ出すそれを、一粒残らずすくいとるようにして、顔に吹っかけた。
そして同時に顔を上げると、もう一人の僕がそこにはいた。
チクチク生えた髭と、ボサボサの髪のせいで、理想の自分とは程遠いように感じる。そう、髭と髪のせいで。
「腹が減ったなぁ…」
おそらく母さんは二人分の昼食を作ってくれているのだろうけれど、僕は母さんと顔を合わせる気にはなれなかった。
「部屋に戻ろう」
鏡と向き合ったまま小さく頷いて、歩きだした。
足音を立てないように自室に戻ると、床に転がった僕の相棒を手にした。そう、ゲーム機を。
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