第2話 カメラがいっぱい
「ほれ!持ってみろ!」
おじいちゃんの手には黒と銀色の鉄の塊…ではなくカメラだった。
手渡されたカメラは角ばっていて無骨で冷たいものだった。
私の知っているカメラと雰囲気が違う。
そして特徴的なのは鉄の屋根がカメラについている。
そして屋根の正面には『F』の文字。
「こいつはなぁ〜NikonFの中期モデルやで。当時は世界最高と言われた名機でな……」
「おじいちゃん、それ長くなるヤツよね。なんか屋根ついたカメラなんて始めてみたよ。で、そのワインセラーみたいなの何?」
このカメラについてウンチクを垂れようとした祖父に釘を差しながらワインセラーみたいなのに近づく。
不思議そうに見ていると、
「これか〜。確かにワインセラーみたいやけど、ワインは入ってないぞ。
こいつはドライボックスやな。 防湿庫とか除湿庫なんても言うが、ようはカメラのカビ対策に使うんやで。埃もつかんしええ事だらけや!
カメラやレンズってのはカビが生えるからな。カビが生えたら大変や。
カビ取るのメチャ大変やし金もかかる!!だから予防第一!
湿っぽいところで使ったりしたら、しっかり乾燥!!
長期保存してるレンズもたまにこうやって動かして中の空気を入れ替えたりするとええんやで。」
そう言いながらレンズの真ん中くらいにあるところを回して見せると、レンズが伸び縮みする。へぇ~ この部分をズームリングって言うんだ。
「で、他に何が入ってるの?やっぱりカメラ?」
「全部カメラやで!!見てみるか?」
話の流れでなんとなく見せてもらう事になってしまった。
気軽に返事したのが不味かったかも…長くなりそう、でも祖父は嬉しそうにカメラをどんどん出して床に置いていく。
先程見せてもらったNikonFを筆頭にCanonとか、私でも知ってるカメラメーカーの名前がついたカメラが床一面に並び始める。
その中で1つ真っ黒なボディのカメラが目につく。
違うメーカーだ、なんと読むのかな…OLYMPUS? お……ぷす?首を傾げながら手に持ってみてみるとOM10って書いてある。
「オリンパスのOM10か、それ電池抜いてるからシャッター切れないぞ」
マジか!いろいろパーツもあるみたいだし何だか難しそう!!ヤバい!?
なんかカメラってめんどくさそう。
私はスマホで問題ないです。
そう思いながら祖父を見ると、どんどんカメラとパーツを床に並べていた手を止めて、懐かしそうに一台のカメラを構えて覗いている。
ふ〜ん…。昔のカメラって覗かないと見れないんだ、そんなことを思いながら祖父を見る。
その姿が西側の窓から部屋に降り注ぐ光を受けて何ともいえないノスタルジックな雰囲気を感じさせた。
なぜだかこの瞬間を残したいと、ポケットからすぐさまスマホを出し、ロック画面からカメラアプリを呼び出して写真を撮る美幸だった。
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