彼女のF値
ruriwo
1章
カメラとの出会い
第1話 何してるんだろう?
「おじぃ〜ちゃ〜ん、何コソコソやってるの?」
部屋の片隅に座り込み、背中を向けてビクッとする祖父を見ながら部屋を見渡す。
久々に訪れた祖父の部屋は相変わらずきれいに掃除がされており、チリ一つなく、相変わらずきれいな洋間だ。
特徴的なのは部屋の南側の壁には、天井まである本棚がある。
そこには様々な本が並んでいる、旅行の本や漫画本、意外なことにラノベなんてのも置いてある、あと年代物の雑誌などもあったような気がする。
そういえはこの本棚の右端の下部にはガラス扉付きの金属棚?箱が置かれていたはずだ。
ちょうど今その辺りで祖父は片膝をついた状態で固まっている。
サッと懐に何かを隠したのを私は見逃さなかった。
祖父は両サイドを刈り上げ、正面から見るとオールバックに見える。だが長髪で赤いゴムで髪を1つに束ねてポニーテールだ。って言うより丁髷だね。
切れ長の目に歳の割にガタイがよく180センチもあるのだが、今は拾ってきた子猫を隠すように小さくなっている。
背中で隠すようにガラス扉をこそっと開けた祖父。
小さい頃から祖父には、「この扉を開けてはいけない!触るな!!」と、散々言われていたので部屋に遊びに来ても近寄ることはなかった。
中学に上がる頃には興味がなくなっていたのもあって、何が入っているのか知らないが、隠す素振りの祖父を目のあたりにして、今は物凄く興味が出てきた。
今日はたまたま、高校に上がる前にと、春休みの期間に思いつきで両親と共に祖父にに連絡せずに遊びに来たのだった。
いきなり来た祖父の家、玄関で迎えてくれたのは祖母だけだった。
祖父は自分の部屋にいるから行っておいで言われたので、悪戯心にコソッと祖父の部屋に来たところなのだ。
「おぉ!!ビックリしたわ!なんや美幸ちゃんか!!今日はどうした。急に来てからに…」
そう言いながらチラッとコチラを見て、手に持っていたナニかを、背中で隠すようにワインセラーのようなモノにしまってからこちらを向く。
何をそんなに焦っているのか、さてはチョット年頃の娘に見せれないものでも見ていたんだろうか?
「そのワインセラーみたいなのって何?それに今隠したのは?
そう言えば昔コッソリ見たとき、中に…う〜ん…色々機械みたいなのが入っていたような…、おじいちゃんのオモチャなの?
それにしてもおじいちゃん、そんなビックリして!!
さてはナニか私に見せれないものでも見ていたのかな?
そう言えば小さい頃からその鉄のワインセラーみたいなのあるし…。
あれ?そう言えばその箱4つもなかったよね?今まで気にしたことなかったし、私がいる時にはおじいちゃんが部屋でソレ触ってることもなかったもんね。いつも本やテレビ見てるだけだったし。私には絶対に触るなって!近寄るだけで怒ったことあったしね。
でもそんなビックリして隠すモノって何?やっぱりエッチな…」
「そんなモノはない!エッチなものはまったくないわ!!小さかった美幸ちゃんに壊されたくなくて触るなって!!言っていただけや。怒ったふうに聴こえてたんなら
4月から高校生やしな、壊されることもなかろう。
女の子やしこんなん興味もないやろうけど見せたげるわ」
観念したように、そう言いながらガラス扉を開けてワインセラーのような箱から取り出したのは黒とシルバーの鉄の塊だった。
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