■自由部始動 新入部員〈萌葱林林〉



「いやー……散々な目に合ったよ……でもこれでわかったでしょ? 林林、『自由部』が如何に危険かってこと」

「うん、絶対に入らないよ」


 保健室に運ばれた里奈ちゃんは命に別状は無く、数分後には目を覚ました。里奈ちゃんを襲っていたバッタは私が取り払った、私は別に虫とか平気だしね。


(それにしても予想以上に凄かったな)


 あんなおかしな人達に会った事ないし、これからも関わる事はないだろう。

ついつい最後まで見入っちゃったけどあんな気狂いな人達とまともにやっていけるわけないからね。


「それで林林、どこにするか決まったの?」

「う~ん……強いて言えば『漫画研究会』か『美術部』かな? 私絵描くの好きだから」


 得意ってわけじゃないんだけどね。


「うんっいいんじゃない! 皆優しい人達だし! これで学校生活楽しくなればいいね! 頑張るんだよっ!」

「……うん! ありがとう里奈ちゃん」

「でも今まで通りアタシ達は親友だからね! 新しい子達と仲良くなっても放っておかないでよ!」

「そんな事あるわけないよ、里奈ちゃんは私の一番だもん」

「えへへ……照れるぜ……あっ! それと響木くんはともかく日常生活でも自由部には関わっちゃ駄目だからね! 何かされそうになったらすぐアタシに言うんだよっ?」

「うん、怖いからすぐ逃げるよ」


 新たな新境地に至った私達は、それでも二人の関係はずっと変わらないようにと約束する。


「アタシは大丈夫だから林林は先に帰っていいよ、もう少し休んでいくから帰るの遅くなっちゃうよ」

「うん、わかった。じゃあ先に帰るね、また明日」


 そうして私は保健室を出て下駄箱へ向かった。


--------------

-校舎入口、下駄箱-


「!!」


 私が上履きを履き替えようと自分の靴箱へ向かうと

 メイド服の上に、ハゲかつらと腹巻きを着用して

 片手には一升瓶を持った黒髪の大和撫子のような綺麗な女性が

 私の外靴の匂いを嗅いでいた。


「親父が女子高生の靴の匂いを嗅ぐのは自然の摂理と思わんか?」


 なんかわけわかんない事を言いながらハゲ親父美少女女子高生は近づいてくる。

 この人……もしかして壇上で鎧を着ていた自由部の人っ!?

 ど、どうしようっ!? 逃げなくちゃっ!


「ところで自由部の部員になったら100万円やろう」

「私を自由部に入れてください」


 こうして私は自由部に入部した。

 しょうがないよね、だって私お金大好きだもん。

 私はスーパーマリオのように空中で後ろにバク宙しイヤッフゥゥと叫びながら里奈ちゃんの言葉を思い出した。


『絶対に自由部には入部しちゃダメだからね』


 あ、そうだった……

 ごめんね、里奈ちゃん。

 私は里奈ちゃんの言っていた言葉を更に思い出す。


『そーゆー時は謝るんじゃないの、親友なんだから。『ありがとう』、そう言ってくれた方がアタシは嬉しい』


(そうだった!)


「ありがとねっ! 里奈ちゃん!」


 私は感謝のあまりロックバンドのライブのように頭を振り、ヘッドバンキングをした。


「だ、誰に礼を言っておるのだ……何だこやつ」



      ~『新入部員 萌葱林林』加入~















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