第10.5話 美人ヤンキーちょろ先生的な人を顧問に迎えるおはなし そのに


 高校生にも見えるし若い教師にも見える微妙な顔立ちの女性。

 言葉使いから察するにヤンキーだろう。

 そのせいか、余計に生徒なのか教師なのか判り辛い。


「部活を見て回ってうちの部活を掛け持ちでやってもいいと言ってくれる顧問の先生を探しているんです」

「……おめー部活やってんのか、ちなみに何部だ?」

「えっと……自由部って言う部活でまだ同好会なんですけど…」


 かくかくしかじか、と簡潔に説明する。


「あぁ、あのイカれた女共のやつか」


 やはり全校人からそんな認識なのか。


 それよりも会話が成立している事に俺は感動する。

 久しぶりに人間と会話している。


「ありがとうございます」ズボ


 俺は感動の余りヤンキーさんのお尻の穴に指を入れた。


「あんっ!!? なっ、何してんだ!? おめーもイカれてんのか! 殺すぞ!」


 ヤンキーさんはすぐに俺から離れた。

 しまった、俺とした事が……やはり自由部に毒され始めている。


「て、てめー少し男前だからって初対面で調子のりやがって……俺が誰かわ、わかってんのか……」

「すみません、一年なもんで……」

「俺は【丁子染(ちょうじぞめ)香茶(こうちゃ)】、去年入ったここの教師だ」


 また凄い名前だ……しかし、教師だったのか。

 その割には初めて見る顔だ、まぁまだ全ての教師を知ってるわけではないんだけど。


「俺ぁ空手部顧問だったんだけどよ、ちょっとムカついて生徒ボコボコにしちまってよ……3ヶ月謹慎喰らって今日が久々の出勤なんだよ、どうだビビったか?」


 成程、いわゆるヤンキー教師だな。

 改めて俺は思う。

 なんて普通の人なんだ。


 響木一斗 16歳 春

 己の精神に限界を迎えた彼が出会った女性がもたらした結果は

 ただただ『感謝』であった。


「感謝するぜ、お前と出会えたこれまでの全てに」


 俺は萌え萌えキュンのポーズで胸のあたりに指でハートマークを作り

 ヤンキーさんのお尻の穴に指を入れた。


「やだっ!?……よーしケンカ売ってんだな殺す!」

「うちの部活の顧問やってくれませんか?」

「……………あ?」


 俺に殴りかかろうとしたヤンキー先生の動きが止まる。


「ふっふざけんなよ、あんな事しといてよく真顔でそんな事言えたもんだな!」

「俺は貴女みたいな普通の人を求めていたんです、お願いします! 俺が雛三○症候群にかかってしまう前に!」


 俺はヤンキー先生の手をとり懇願する。


「ばっ! な、何してんだ恥ずかしいだろ! わっけわかんねーし!……わ、わかったから手ぇ離せよ!」


 ふっ、ちょろいな。

 今度からこの人の事はちょろいん先生と呼ぼう。


「まぁ空手部には今更戻れねぇし暇だし別にいいけどよ、そんかし気にくわねぇやつらはしごいてやるから覚悟しとけよ!」


 願ってもない事だった。

 こうして自由部に普通でまともなヤンキー先生が顧問として配属された。


(これでようやくまともな部活になるっ……!)


 そのはずだった。


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<翌日>


-部室-


 部室に入ると、昨日のヤンキー先生が部員達と戯れていた。


「いや~ん可愛いっ! お人形さんみたいだなおいっ! 雪音っほらっうんち漏らせっ!」

「ぉ……ぉお……」プゥ

「おなら香ばしいっ! 俺もするぜオラァッ!」ブボボボボ

「先生っ、お茶が入りましたよ」

「サンキューれいんっ! 生理にはタンポンを尿道に突っ込むといいぞそらっ!」ズポッ

「あぁん」

「すっ、すごいですっ! じゃあアタシはこの1UPキノコを突っ込んで無限コンティニューしてやりますっ!」ズポッピコンッピコンッピコンッピコンッ1UP1UP1UP1UP

「じゃあ俺はそれをワニワニパニックのように叩き続ければいいんだなっ!?」バシッッバシッッバシッッバシッッ!


 なんなんだこの状況、そして誰なんだこいつは?


「誰なんだこの変態教師を呼びおったのは」


 夜永さんが冷静に、先生をゴミを見るような眼をして言った。

 違う、俺じゃない。

 俺が誘ったのは普通の人間のヤンキー教師だ。


「おう、一斗じゃねぇか! これからよろしくな!」

「ちょろいん先生、これはどういう事ですか」

「? 何がだ? 俺は可愛い女が大好きなんだ、男もイケるけどな、つまり両刀使いだ」


 違う、そんな事は聞いていない。


「想像以上にイカれた女共……略して『イカの薫り湧き立つムラムラする痺れた可愛い女達(共食い)』じゃねえか! テンションあがるなおい!」


 略してないし、そんな日本語は聞いた事がない。

 残念ながら俺はまた隠れた怪物を呼び寄せてしまったようだ。

 助けてドラ○もん。


 俺は後ろからひたひたと忍び寄る足音に怯え

 首をかきむしって気絶した。




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